小指の思い出について1

ずいぶん前にいくらか冷え込んだ晩秋の夜、誰もいない状況なのを奇貨としてつないでいた手を持ち上げて相手の指を口腔内に含んだことがあります。案の定、バカと小声で罵られて即、口腔内から指は消えたのですが、以降、いたすことをいたそうとしているとき(よいこのみんなはなにをいたすかはわかんなくていいです)唇のそばに薬指や中指が接近することがないわけではありません。意図はなんとなくわかるので口に含みます。甘噛みもしたこともあります。でも本気で噛んだことはありません。

昨夜テレビをつけたらNHK総合桑田佳祐さんがカバーした昭和や平成の歌謡曲をまとめた番組をやっていて

あなたが噛んだ 小指が痛い

という伊東ゆかりというひとの「小指の思い出」という私が生まれるより前の時代の曲を桑田さんが歌っていて(CMなどで一度は聴いてるはずででもっていままで気にもしなかった曲なのですが)、風呂上がりだったのでメガネをかけてなかったので画面を視ず耳で聴きながら髪を拭いていたものの、手がとまりました。意味がわからなかったわけではないです。おのれの経験を想起して、ほんとに痛いわけではないのだろうな・ほんとに強く噛まれたわけではないのだろうな、と推測がつきます。おのれの経験を横に置いておくとしても、それでも「わたし」と「あなた」の間で、指を噛まれるようなことがあったことだけは7文字と5文字だけで間接的にはっきりわかります。エロい言葉をつかってるわけでもないはずの7文字と5文字で、すごくエロい世界が凝縮されてるなあ、と思えてびっくりしたのです。と同時にエロっていったいなんなんだろう、と考えさせられたものの答えはありません。ひょっとしたら想像の余地を残すことなのかもしれませんが。

なんだか質のいい度の高いお酒をあおってかえって目が醒めてしまったような気がして・隣県まで行くので早く寝ようとしていたのになぜか見ておかねばならぬ気がしてあわててメガネを探し、特段サザンのファンというわけではないのですが番組の終わりまでテレビの前で過ごし桑田さんの世界を堪能しました。再放送はなさそうなのが残念です。