いとこ婚

近親婚というのは日本においてタブーかっていったらそれほどではなかったりします。近親間で婚姻届は出せませんがセックスをしても成人間であれば罪に問われません。問う条文すら存在しないはずです。ドイツでは禁固刑だったりします。
その伝統は古来からです。
日本神話のなかに大国主神のその妻のひとりに須世理毘売命というのがいるのですが、ふたりとも須佐之男の子供だったりします。源氏物語なんかもそうで二番目の妻になる女三宮は源氏とは叔父と姪の関係になるはずです。大国主命の話はともかくとして、源氏物語の話に嫌悪感を抱く人が居るかって云ったらあまりないのではないか、とおもいます。
近親婚でもいとこ同士の婚姻になるとぐっと抵抗感は減るでしょう。有名なのは前田利家とその妻である「まつ(芳春院)」で、いとこ同士です。ちなみに日本には「いとこ同士は鴨の味」なんて言葉もあります。


前にも書いたのですが「いとこ同士の結婚」って可能なんすけど、これがダメなところがあるんすよ。アメリカの半分くらいの州はダメで中国もダメです。でも日本だと誰もおかしなこととは思いません。なんでかは正直わかりません。
ただ推測はできます。
昔からの不思議な言葉として「どこの馬の骨ともわからない」っていう言葉あって(馬≒労働力とか種付けって言う連想なんだろうな、とおもうのですが)ほんとどこの生まれだかわからぬような見知らぬ土地の異性よりも筒井筒みたいな小さいころから見知った相手のほうが、ってのが延々と続いてきていたのではないか、と推測します。また往来が盛んではなかったであろう農村の状況と関係してきて他所から嫁を迎え入れるよりは知ってるところから嫁を迎える、という慣習があったのではないかなんて考えてました。そんなような状況の中でいとこ婚は特段意識されずに許容されてきたんではないかな、と思います。や、許容どころかむしろ誰も疑念を抱かなかったはずっていうか今でも誰も疑念を抱いてないわけですが。


なんというか禁忌ってされてるものって、案外根拠ってなくて慣習という多数派の空気のようなところに根ざしてるのかも、ってずっと疑ってます。


さて、ちょっとだけ民法を眺めます。

民法734条
1 直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。但し、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第817条の9の(特別養子と実方との親族関係の終了)規定によって親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
(追記→直系血族というのは親とか子、祖父母、孫なんかです。それ以外の血縁者は傍系血族といいます。兄弟姉妹やおじ、めい、いとこなんかがそうです)

いとこ婚が可能なのは734条が「3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない」としてるからです。
親等というのは親子関係の個数と考えてください。タラちゃんからするとサザエさんは1親等になります。フネさんはサザエさんのお母さんですから2親等です。兄弟姉妹はどうなるか、というと親を経由します。サザエさんとわかめちゃんは「波平さん・フネさん」の子になりますから、サザエさんと「波平フネ」の間にカウント1、わかめちゃんと「波平・フネ」に間にカウント1となり、2親等の間柄です。わかめちゃんからすると「サザエさんとマスオさんの間の子であるタラちゃん」はサザエさんとの間に2親等、さらにサザエさんとタラちゃんの間に1親等ですから3親等(おばとおい)です。安心してください。婚姻はできません。結婚できるのはさらに親子関係がもうひとつできないとまずいわけです。仮にわかめちゃんがとこかに嫁いだあと子供が生まれたらその子とタラちゃんはいとこ同士ですから婚姻可能です。4親等っすから。


ところがですねー、仮にマスオさんに愛人がいて、その愛人が女の子を産んだとします。その子をマスオさんが認知しなかった場合は親子関係が発生しませんからタラちゃんとその子は民法上は兄弟姉妹でも(血族でも)なんでもないのです。万一その子とタラちゃんが街角で偶然であって恋に落ちたら生物学上は異母兄妹であったとしても二人を阻む法的阻害要因ってのはなぜかないのです。いとこ婚とは関係ないんすけども。


この国ってちょっと不思議なところがあります。