「カラーテレビにしたって、色はいろいろあるでしょ」(もしくは性の多様性に関する雑感)

最近アニメの話ばかり書いている気がするのですが少しお付き合いください。

昭和の、確実に小学生のころ、「ストップひばりくん」というアニメが夜7時台にありました。放送はほんと記憶にありませんが、番組冒頭の

「カラーテレビにしたって、色はいろいろあるでしょ」

(「ストップ‼ひばりくん」作詞・伊藤アキラ

というフレーズのある主題歌は

「ぼく、君が好きもじもじしないで」

(「ストップ‼ひばりくん」作詞・伊藤アキラ

と続いていて、主人公が同性を好きになるという設定なのかと子供でも理解できる内容で、ああそういうことがあるのか、と察しています。

神様のイタズラと思えばすむこと

(「ストップ‼ひばりくん」作詞・伊藤アキラ

 と半ば強引に他人(?)に転嫁へと続くのですが説得力があるかは別として、当事者になってからその歌詞を思い出して大国主命か誰かはしらぬものの神様のイタズラなのかと腑に落ちています。おそらくひばりくんが同性愛というものを知った最初の機会です。私の場合、性の多様性について知ったのは教育ではありませんし、知識を得たからセクシャルマイノリティの当事者になったわけでもありません。パソコンなどを買うときに性能や価格を調べて合理的・打算的に判断しますが、私生活においては非合理的・非打算的に行動をした結果、傍からみるとそこはセクシャルマイノリティとくくられる場所なのだな、と気がついた次第です。

話はいつものように横に素っ飛びます。

東京ローカルで恐縮ですが、足立区議会で個人の生き方に干渉しないと前置きした上で性の多様性について教育の中で教える必要性について疑義を呈する趣旨で「LやGが足立区に広まってしまったら、子どもは1人も生まれない」と発言した区議さんがいて、性の多様性を教えてセクシャルマイノリティが増えて広まるのなら(私は偶然当事者になっていますが)だとしたら「ひばりくん」を視聴した関東の小学生全員、いまごろどうなってるのだろう、とは思いました。当該区議会議員さんの発言はなんだかSFチックでふふふと笑えてくるのですが、ほんとは笑い事ではありません。

 東海道中膝栗毛弥次さん喜多さんは原典では陰間茶屋の元客と元従業員で、そもそも二人は駿府から駆け落ちして江戸に来て、さらに伊勢に行きます。江戸時代に読まれてた頃は既知の事実だったはずです。ところが現代においては誰もが弥次さん喜多さんがどういう関係か知ってるとは限りません。この国の恐ろしいところは存在してるものであってもいつのまにか多数派にとって不都合かもしれぬ属性が容赦なく削ぎ落されてしまうことです。

当該議員さんの発言は、最初に決めつけによる結論があって、決めつけがあるので結論にいたる理由とされてるものがちっとも理由になってないような気がしてならず、結果的に困惑しながら笑うしかありません。ただその根っこにあるものについて考えると、ある政策にとって不都合なものは削ぎ落してしまった方が良い、という動きが出てるのかなあ、と。弥次さん喜多さんのことを知ってるのでhistory repeats itselfという言葉が浮かんでくるのですが。

私個人は性の多様性について教育機関で教える機会があるのなら教えた方が良いと考えます。多くの情報に触れることによって人は人格を形成します。その情報のひとつとして多数派とことなる存在について伝えたほうが良いはずです。例として正しいとはおもえませんが、私はひばりくんとその主題歌で同性愛を知ったわけで、他にもそういう人がいるという存在を知らなかったら、そして「カラーテレビにしたって、色はいろいろあるでしょ」や「神様のイタズラ」の歌詞もそうなのですが、もっと悩んでいたでしょうっててめえのことはともかく。繰り返しますが多くの情報に触れることによって人は人格を形成しますからその機会は減らすべきではないです。教育現場でなくてもほんとは多くの情報に触れる機会があればいいのかもなんすけど。