顔見知りの消化器科の先生が「食欲はすべてを癒す」と云っていたので一時期それをちょっと信じていました。働いているとある程度のお金は自由になります。なので親が病気になったとき食費はケチりませんでした。たとえば干物は高島屋か大丸の干物売り場で一枚300円くらいのを買ってましたし、山形産の洋梨の缶詰でも2個700円くらいのをけっこう平気で買っていました。ただし食欲がすべてを癒すといってもがんに勝てませんでしたが。でもその残滓か、食べ物にちょっとだけお金をつかうことがあります。
冬から春にかけ十二指腸潰瘍をやっちまったのですが、久しぶりに「食欲はすべてを癒す」と思い出してあれこれ試行錯誤していました。ジャガイモは食べて良い部類であったので、キタアカリをイトーヨーカドーで買って食べていました。キタアカリは一般的な男爵より実が黄色くていくらか甘く美味で、でもけっこう煮崩れしやすそうで、おそらく煮物には向かない食材です。しかしマッシュポテトや砂糖醤油のイモ餅とかにはけっこうはまります。痛み止めがNGの中、後日もう一回作って食べようという気になり、だいぶ助けられました。はてなの今週のお題が「今年買ってよかったもの」なのですが、筆頭はやはりキタアカリです。潰瘍がなんとかなったいまでもキタアカリは買っててジャーマンポテトを作ったりします。
お会いしたことはないもののe_pyonpyon21さんからアドバイスを受けて夏前から買うようになったのがフンドーキンの八本木樽醤油です。東京で売っているヒゲタの本膳もすっきりとして旨味がうっすらあり美味しい醤油です。ですが、ほんのちょっとの差異であるものの刺身などの場合は「ヒゲタ醤油に未練はないが」と歌いたくなるくらいフンドーキンのほうが「あうなあ」と思いました。今夏は八本木樽醤油をつかってみりんや白ごまや日本酒をあわせて鯵やマグロにつけた「りゅうきゅう」をわりと食べていて「食欲はすべてを癒す」であまり夏バテせずに済んでいます。惜しむらくは常においてるのが日本橋高島屋のみで東京ではどこでも置いているわけではないのと、150mlで300円超という強気の値段設定である点です。でも美味いものを喰わせたい相手がいるのと、働いてある程度はお金は自由になりますからちょくちょくは手を出していて高島屋のポイントカードのポイントがこまめに貯まっています。これからの時期は餅を焼いて八本木樽醤油をつけて喰うつもりです。
私は朝が強いほうではなく、毎朝、朝が来たことを恨みながらパンを毎朝一枚焼いて食べて出勤するのですが、パンに塗るのはアヲハタのオレンジマーマレードをずっと使ってきました。大丸で見つけてちょっと浮気しているのが明治屋の宮崎育ち日向夏マーマレードです。酸いも甘いも噛分けてっていう年齢になっちまったのかもですが(ジャムですから甘さはありますが)酸味がわりとあります。前日の疲労感が残ってる朝でも日向夏のマーマレードを一口でも味わうと食欲が出てきて気は紛れてきてちょっとは「いまのところは世界を恨まなくていいかな」的な状態になります。すべてを癒しはしませんが日向夏が思考をいったんシャットアウトするのかもしれません。でもって「たまに」というのが重要で、それがあたりまえになってしまうと意味がないとおもってて、浮気程度にとどめています。
ほんとに「食欲はすべてを癒す」のかはわかりません。たぶん科学的にはそんなことはないでしょう。でも「あれ食べようかな」くらいのものが複数あったほうが、そこそこ人生おいしく生きていけるんじゃないかなと思ったり。