西武鉄道というのがあります。池袋と新宿から所沢を経由し狭山・川越や飯能・秩父へ路線を伸ばしてます。以前は株式を上場してたのですが、有価証券報告書で名義を偽装する虚偽記載を行っていたことが発覚し、東京証券取引所の定める上場廃止基準に抵触し、上場廃止になっていました。借入金が過大であったのでみずほ銀行が経営陣を送り込み、外資系ファンドの出資(32.42%)を得て不採算のホテルを売却しながら再建をすすめていたのですが、その外資系ファンドがみずほから来た経営陣と決別し、企業価値の向上を目的に西武鉄道の経営権を握ろうとしました。企業価値の向上といってもいってることは単純で収益性向上・株式の価値が上がるような施策を打つことで、たとえば特急料金の引き上げのほか、秩父方面の不採算路線からの撤退と、西武ライオンズの処理などがメニューになってました。南海電車の場合、不採算の路線を他社に引き継いでもらったこともあり、ここらへん不可能なメニューばかりではありませんでした。その一環としてファンド側はTOB(株式の公開買い付け)を行い持ち株比率を3分の1超に引き上げて(36.44%そののち44・67%)ようとしました。ふたを開けると目標の36%には届かずじまいです。会社にある定款の変更(定款記載のことしか会社はできない)、会社合併、株式交換、株式移転、減資などの重要事項は[特別決議]という株主の3分の2以上の賛成が必要でファンドはそれら重要な案件での拒否権発動はできるようになりましたが、思ったよりも賛意はあまりあつまりませんでした。買い付けの価格が株式上場廃止時に400円台であったものを1400円程度で買い付けるので現在の株主にとっては悪い話ではなかったはずなのですが。
人はカネでは動かないってことなのかもしれません。

ファンドというのは第三者から出資を募り資金を運用しますからどこかでリターンを求めます。リターンは高ければ高いほど良いはずです。だから西武に投資した外資ファンドが投資先のさらなる企業価値向上をするのは別におかしな話ではありません。でも今回、鉄道会社への外資への規制を検討すべきではないか、という案まで出てきてて、外資ファンドのその姿勢について批判がなされたりしていました。
おそらくある一定の面では「会社は株主のもの」というのは間違ってないはずなのですが、投資効率や経済合理性を優先するような「会社は株主だけのもの・株主だけが最大限利潤を得るような会社」というのは「それはちがうんじゃないの?」という空気・コンセンサスのようなものがこの国にはまだあるのかもしれません。もちろん実体があるわけでもないですからへたなことはいえませんけども。