オウム真理教麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(53)側が10日、東京地裁に再審を請求したことがわかった。教団による事件では5人の死刑が確定しているが、再審請求が確認されたのは元教団幹部・O死刑囚(48)に次いで2人目。法務省は再審請求中の死刑囚について、執行を避ける運用をしており、今回の再審請求で、松本死刑囚の執行時期に影響が出る可能性がある。関係者によると、再審請求に当たる弁護団は、地下鉄サリン事件などで殺人罪などに問われ、1、2審で死刑判決を受けた元幹部(48)(上告中)の法廷供述などを新証拠としているとみられる。(略)松本死刑囚は04年2月、東京地裁で死刑を言い渡された。期限内に控訴趣意書を提出せず、東京高裁が06年3月、控訴を棄却。異議申し立ても退けられ、同年9月、死刑が確定した。
(11月11日読売新聞より転載)

まだ続いてたのか、っていう印象を持たれてると思うのですが、ひょっとしたら長い裁判がもう一回はじまるかも、という感じです。
一審の死刑判決があって控訴ってことになったのですが、その控訴趣意書を実は一審の国選弁護団が辞任した後就任した弁護団が裁判所に期日までに出せなかったのです。本人と意思疎通ができないことが理由だったんすけども。意思疎通を図るのは理想だと思うし、その弁護団の主張って判るんすけど、結果的に被告が控訴審を受ける権利を奪い、一審の死刑判決を確定させちまったのは正直どうかな、と思っていました。


で、そのとき結果的に棄却されたものの公判手続き停止の申し立てもしていました。訴訟を遂行できる能力がもうない、っていう主張をしていたのです。薬害エイズ訴訟のときの元帝京大副学長もそうだったんすけど、裁判開始後に痴呆が進行したり発病した精神病などによって訴訟能力がなくなることがあって、そうなると本人には当事者能力がないのだから、公判は停止されなければならないって云う建前です(事実薬害エイズ元帝京大副学長は公判が停止しました)。でもほんとに被告に訴訟能力がなかったのならば理屈を云えば(当事者じゃないから気軽にいえて実際はひどく大変なことと思うのですが)そのことを控訴審で争ってもよかったわけです。


で、今回の再審請求は誰が出したのか、なんすけど。刑事訴訟法には

第四百三十九条 再審の請求は、左の者がこれをすることができる。
 一 検察官
 二 有罪の言渡を受けた者
 三 有罪の言渡を受けた者の法定代理人及び保佐人
 四 有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹

とあるので、四号の家族なのかもしれませんが、二号の本人だったら控訴審前の騒ぎはなんだったのか?ってことになります。もっとも、仮に四号によって家族が請求し、新証拠があって再審が開始しても(この何年かで本人が劇的に症状の改善があったならいざ知らず)それなりに弁護団が意思疎通できてたっぽい一審の頃と違い本人が訴訟能力の有無について争うような状態で公判が維持ができるんすか?って云う素朴な疑問もあります。仮にそうなったら事実上本人がいてもいなくても変わらんような状態で進むかもっすけど。


事件が事件ですし裁判によって全貌が明らかにされることを強く希望する被害者もいると思うし、さらに死刑判決があったあとの再審請求ですから簡単に蹴飛ばしてケリがつくとは思えませんが、はじまったらはじまったで混乱しそうな気がします。裁判の公正さを保つためのことっすから充分な手続きを踏むことも、時間をかけることも必要なことって判ってるんすけども、この裁判のニュースを観るたびにやはり正直長いなー、とか考えちまいます。
考えてみたら事件そのものはもう10年以上昔の話なんすよね。