ラトルのドイツレクイエム

いやよいやよも好きのうち、なんて言葉がありますが、あまり好きでもないのに気になる存在ってのがいます。
サイモン・ラトルという人はまさにそれで、この人が振ると打楽器出身のせいなのかテンポよく小気味よく、ってことが多かったりします。有名な三連音、ダダダ・ダーンではじまるベートーヴェンの運命もこの人、さらさらとやっちまったことがあってびっくりしたのですが、三連音がドアをコンコンコン、とノックする音じゃなくってあれは若き日のベートーヴェンのおたけびというか咆哮だ、という解釈らしかった。そいやマーラーの八番もさくさく進めちまって、どちらかというとゆったりとしたテンポでってのが好みなほうからすると、神の賛美は快活でエネルギッシュでも良いのではという解釈は実際面白いと思う。で、気になって購入。

ブラームス:ドイツ・レクイエム

ブラームス:ドイツ・レクイエム

はやいと物足りない、とかくと早漏をなじってるみたいですが、音楽の場合それでもうまくいくことがないわけでは無い気がしてきました。この曲、レクイエムなので重いところは思いっきり重く振るのがスジなんじゃないかと思うのですが、暗さと重厚感を意図的に排除してるようにどこかすっきり仕上げてます。重苦しさが薄まると美しい部分がより見えてくるから不思議です。合唱がすごくいいせいかもしれませんけど。
でも、例えばこの曲の第六楽章にある歌詞があって原詩は
Tod,wo ist dein Stachel?
で、英訳をみると「死よ、おまえの勝利は、どこにある?」なんでしょうけどこういう語句を引用してるということは死とかへの怖れってのがブラームスは感じてたはずとどこか私は思っちまうので、なんだか重苦しくないのはどんなものかな?とか思っちまうのですが。
それとも死というものを私が大げさに考えてるだけか。