参院選において各選挙区の議員定数の配分に不均衡があり、人口数との比率において選挙人の投票価値(一票の価値)に不平等があるのは違憲なのではないか、というのがずいぶん昔から、あります。少なくとも私が学生時代のころからある、大都市を抱える選挙区と非都市部の多い選挙区の間に起きる根の深い課題です。で、昨日直近の参院選で5倍の格差が違憲なのではないか、という裁判の最高裁の判決言い渡しがあり、違憲状態である、ということになりました。一票の重みが議員一人当たりの人口が最高の選挙区と最低の選挙区とでおおむね1対2以上にひらくことは憲法が要請する法の下の平等・投票価値の平等に反しますし、1対2以上開くことになれば一人に2票与えたのと同じ効果がでちまいます。ですから「違憲」もしくは「違憲状態」というのは誰の目から見ても「そやろなー」ということになります。今回は「参院衆院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負ってい」て15人中が11人がいまの状況を「憲法違反とはいえない」としつつ違憲状態と判断し、3人が違憲と述べ(残1人は身内に選管関係者がいるので審議に加わらず)ています。
以前は参院は地方区に地域代表的要素があるので一概に格差があっても立法裁量の範囲内でやむを得ないのではないか、という判決(最大判S58・4・27および最判S63・10・21)がありました。でも完全に舵を切っていて、地域代表的要素より一票の平等について重きを置きはじめています。現在の地方区を維持したまま一票の価値を守ろうとすると人口の少ない鳥取県高知県をどこかと合区せざるを得なく(でも仮に高知をどこかと合区するといっても高知は悲しいかな他県との間は山に囲まれてるので合理的でない)判決を引用すると「都道府県単位の選挙区を維持しながら投票価値の平等の実現を図ることはもはや著しく困難な状況」にぶちあたりますが、いま直面してる選挙制度の問題は地味にけっこう難問です。今回の判決の中でひとりだけ「都道府県以上に意味のある選挙区単位を見いだすことは容易ではない」ということを述べていて「うーん」と唸ってしまうのですが、じゃあどうすればいいのか、答えが無いのです。


前にも書いたのですが、民主党政権になってから「沖縄の基地問題は国民の生活には関係ないことだから」という関東の代議士がいて、県内に基地を抱える沖縄選出の自治体の議員が猛抗議し発言を撤回させたことがあります。民主党のその代議士の資質に問題をすり替えてしまうことも可能ですが、そういう問題でもないような気がするのです。選挙で選ばれた人はどの選挙区にかかわらず全国民の代表であるべきなのですが、なかなか困難です。人口の少ない地域固有の問題を、どう国政に反映させるべきなのか。人口の少ない地域の代表を減らし、人口の多い地域に多くの議席を配分することで解決するのは難しいのではないかと思えるのです。
おめーほんとに法学部卒なの的な、ひどい暴論を吐くと、地域固有の問題を国政の場で反映させるためには法の下の平等の貫徹がなされなくてもやむをえないのではないか、と思ってたのですが、それがダメ、という場合、どうすべきなんでしょう。
実はこの国の民主主義の在りかたってのが、けっこう根本から問い詰めないといけない時期に来てるような気がするのですが、うーん。