何回も書いてることなんすけど。
参院選において各選挙区の議員定数の配分に不均衡があり、人口数との比率において選挙人の投票価値(一票の価値)に不平等があるのは違憲なのではないか、というのがずいぶん昔から、あります。少なくとも私が学生時代のころからある大都市を抱える選挙区と非都市部の多い選挙区の間に起きる根の深い課題です。で、2010年の選挙のときは格差は5倍でした。それを定数そのままに4増4減し13年の参院選で4,77倍の格差(鳥取と北海道)になっていたのですが、それについて問う裁判の最高裁の判決言い渡しが2014年にあり、13年の選挙について「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあった」多数意見として違憲状態である、という判断が下りました(15人中11人)。ただ5倍の格差があったことにつき違憲とした10年の参院選についての最高裁判決から13年夏の選挙まで9か月しかなかったことを踏まえて「格差是正のための合理的期間は過ぎておらず、違憲とまでは言えない」ということを述べています。でもって15人のうち4人は「違憲」と述べています(そのうち1人は「投票価値の平等は、唯一かつ絶対的な基準として真っ先に守られるべきだ」ということを述べてて、選挙無効にまで言及しています)。単純に考えると一票の重みが議員一人当たりの人口が最高の選挙区と最低の選挙区とでおおむね1対2以上にひらくことは憲法が要請する法の下の平等・投票価値の平等に反しますし、1対2以上開くことになれば一人に2票与えたのと同じ効果がでちまいますから「違憲状態」もしくは「違憲」というのはわからないでもない話です。
以前は参院は地方区に地域代表的要素があるので一概に格差があっても立法裁量の範囲内でやむを得ないのではないか、という判決(最大判S58・4・27および最判S63・10・21)がありました。でもここで完全に舵を切っていて、14年の判決でも「都道府県を選挙区単位とした現行方式をしかるべき形で改めるなど速やかな見直しが必要」と述べてて地域代表的要素より一票の平等について重きを置きはじめています。都道府県単位の選挙区を維持しながら投票価値の平等の実現を図ることは著しく困難な状況であるのは参議院側も承知してて、鳥取+島根、徳島+高知とかの隣接県の合区を含め是正案が検討されてきてて、参院では可決され衆院へ送付されます。
さて、徳島76万、高知が73万で人口150万弱の沖縄や滋賀と同じくらいになります。ですから数字の上ではわからないでもないなあ、とは思えます。しかし数字を抜きにすれば合区であればどちらかの県側から議員が選出されにくくなるのではないか、という不安がぬぐえません。いままでは都道府県単位で地域の代表を「必ず」参院に送ることができましたが、それができなくなりました。合区となった徳島+高知は隣県ではあっても山を隔ててのことですし県都相互の結びつきはそれほど強くありません。高知駅に行けばわかりますが、高松行はあっても徳島行はありません。農業政策でも高知は意図的に高効率高付加価値の園芸作物などに力点を置きつつやってきましたが徳島はそこまでの園芸県でもありません。地図上はともかくとして、かなり事情が異なる・求められる政策が違う「お隣さん」です。そんな地域を数字の問題で一緒にしちまって果たしていいのか。
選挙で選ばれた人はどの選挙区にかかわらず全国民の代表であるべきなのですが、理想はそうであってほしいものの、残念ながらなかなか困難です。なんべんも繰り返して恐縮なんすが、民主党政権のとき「基地問題は国民の生活には関係ないことだから」という北関東の代議士がいて、基地を抱える自治体の議員が猛抗議し発言を撤回させたことがあります。その顛末の映像をみて、現実的には地盤のある地域の実情しかわからない可能性が高いのではないかと疑っています。そんななかで合区などで一票の価値を平等を引き換えに地域の代表というのを必ず出すシステムを無くしてしまってほんとに良いのか。
また合区は選挙区が広大になるデメリットもあります。政党のバックアップや資金力がないと当選が困難になるほか、広域になるほど離島や過疎地域より集票しやすい都市部の意見が反映されやすくなる危惧があります。
ウルトラCは最低一県の定員を2として(一回の選挙で1人だす)それを前提に、人口が最高の選挙区と最低の選挙区とでおおむね1対2以上にひらくことにならないように国会議員を増やすことなんすが、行財政改革が叫ばれる中なかなか困難を極めるかもしれません。でもって差異のある少数派の事情をどうやって酌むか、というのは民主主義の基本でもあると思えるのです。過疎地域という少数派にも発言権というのは確保されてしかるべきでしょう。そこらへん考えると、合区をしたうえでの選挙≒特定の地域の発言する機会を減らす、というのはどこか愚策であるような気がしてならないのです。