ボーイズラブ(BL)」と呼ばれる男性同士の恋愛を題材にした小説を図書館に置くべきかどうか、BL小説を20年近く買い続け、計5500冊を所蔵する堺市立図書館が対応に苦慮している。
「子どもに悪影響を与える」と廃棄を求める声が相次いだのに対し、「性的指向による差別につながる」と廃棄の差し止めを求める住民監査請求が4日、市に出された。 BL小説は作者も読者も主に女性で、文章の合間に、1冊で計数ページの挿絵があるのが一般的。堺市立図書館では全裸の男性が抱き合ったり、下半身に顔をうずめたりしている挿絵がある作品も扱っているが「1冊あたり1、2ページに過ぎず、大阪府条例の有害図書にあたるものは一切ない」としている。 計7館の堺市立図書館を統括する中央図書館によると、堺市立図書館では利用者の要望を受けて90年からBL小説を買い始めた。03年には最多の825冊を購入したが「内容が過激化し、一定の配慮が必要」と05年から抑制している。総数は蔵書の1%未満、購入総額は約370万円という。 「ほかに買いそろえるべき有益な本はたくさんある」。今年7月以降、電話や複数の図書館窓口で、市内在住の子どもの保護者らから廃棄を求める声が相次いで寄せられた。一方、4日に監査請求した市民は「基準に基づいて整備した図書を、特定の意図で排除することは許されない」と訴えている。 堺市立図書館は8月、露骨な性描写があるイラストや文章があるBL小説について(1)今後、収集しない(2)18歳未満に貸さない、などとする方針を決めた。中央図書館の松井孝参事は「『露骨』の線引きは難しい。利用者の反応を見ながら、検討を続けたい」と話している
(11月5日付朝日新聞より転載)

毎日、日経、読売あたりは目を通すのですが、このニュースは最近までしりませんでした。
図書館学なんてのを学んだわけではないし、一利用者でしかないのですが、興味深いなー、と思ってます。
そもそも本を借りる借りないの主導権は借りる側にあります。
で、「子供に悪影響がある」というなら図書館へ一緒に行くなり、もしくは子供に家庭内で「こういうのは読んじゃダメよ」って云えばいいじゃん、って思うのです。なんでだめか、その理由を親が自分の言葉で語ればいいんすよ。もちろんいろんな正解があるから、一概になにが悪いってことを家庭内でも決め付けられないっす。でもそれも含めて家庭内で対話すりゃいいはずのことなんすよ。そういうのは一種の教育じゃないのかな、とおもうんすけども。それができないから、図書館に責任転嫁してるだけなんじゃ?と下種な勘ぐりしちまうんです。ちがうんすかね。
で、図書館は教育施設の側面はありますが、公序良俗とかなにかが正しいっていう思想を教え込む場所ではありません。個人的には源氏物語や火宅の人なんかも、「子供に悪影響」を与えそうなんすけども。こういう風潮になったら排除されるかもっすね。


いちばん不思議だなーと思ったのは、「ほかに買いそろえるべき有益な本はたくさんある」って云う考え方です。有益ってのは人によって違うので統一的基準なんてありえないでしょう。そんなもの誰が決めるんすかね。編み物の本は有益なんかなー、っていったら、そうかんじる人とそうでない人にわかれるわけで、決められるわけではないと思うのです。もちろん健全な青少年の育成に「全裸の男性が抱き合ったり、下半身に顔をうずめたりしている」本が有益かっていったらそんなことはないでしょう。男同士でだきあってないけどコンクリート研究やフランス家族法研究の本が市民に有益?っていったら、首をかしげる人もでてくるはずです。図書館の本は碁石の捨石みたいなものでたまに利用者にとって局部的に強烈に役に立つことがありますが、ふだんはあまり役に立たない本ばかりでしょう。本や資料に有益無益って云う言葉が出てくるところがおっかないなー、と思います。


もう一つ、気になったのが(小さい頃から「全裸の男性が抱き合ったり、下半身に顔をうずめたりしている」本を読み続けることで世の中の男はすべてそうなんじゃないか、って思うようになるのはさすがにまずいのですが)仮にこれが男女だったら問題にならなかったんすかね。そうだとすると、これもまた不思議なんすけども。


性的表現が不快ってのはまったくわからないでもないですし、最低限の教育的配慮として一般書籍と区別して18禁としておくのは良いとしても(図書館に18禁ってのも不思議ですが)、資料や図書を有益無益で区別し無益だからと排除すれば済むかって云ったらやはりどこか間違いな気がしてなりません。