山梨から東京に戻るのには中央線のかいじ号や中央高速で戻れば速いと知りつつも、空梅雨気味で、かつ、灼熱の東京に急いで戻る必要もなくね?ということで週末に遠回りして身延というところに寄り、その日山梨県内も最高気温が34度予想で暑かったので冷たいそばを昼飯として食う腹つもりで蕎麦屋に入りました。入った店が久遠寺の門前町にあったせいか肉や魚を使ったメニューがなく、ので湯葉と椎茸の載っているものを頼んでいます。で、湯葉はどってことなかったのですが、問題は椎茸です。
椎茸が肉厚でとてもジューシーというか美味で、うっすらと甘いのですがあとを引かず、これどうやって作るのだろう真似したい、もしくは、別途売ってるのなら買って帰りたい、と思えるほどでした。ので(これ同じの作れる?と小声で云われたせいもあるのですが)お店の人にバカ正直に訊いています。その結果、市販のものではなく自家製で、干し椎茸を戻して醤油を使ってることまでは教えて貰えたのですが、「あとは企業秘密ですw」と愉しそうに云われちまっています。ちょっとだけ食い下がって「精進ですよね?」と確認したら首を縦に振っていたので、かつお節等の素材は使ってないようで。
そばつゆは醤油+砂糖+みりんをあわせて作る「かえし」と呼ばれるものに、いわゆる「だし」を合わせて作ります。「だし」は地域差がありますが東京の場合はかつお節のほかにさば節などを合わせます。が、身延は山梨で寺院の門前であることを考えるとおそらく生臭ものになるそれらを椎茸にも使っていないはずで、だとすると、ファーストチョイスは昆布でそれにくわえて椎茸そのもののうまみ、それに砂糖やみりんなどが考えられるよな、いやでもおれが知らないなにか別の植物性のうま味が入っている可能性もあるよな…などとしばらく脳内は椎茸のことばかり考えていました。
おのれの人生で椎茸についてこんなに真剣に考えたのははじめての経験です。美味いものって人を思索に引きずり込みませんかね…ってそんなことないかもですが。
東京へ戻る帰途、身延線の沼久保から西富士宮にかけて車窓から運が良ければ富士山の雄大な姿が見えるはずなのですが、この日は雲に隠れてムリでした。残念感が不思議と薄かったのですが、直前の椎茸のおかげかもしれなかったり。美味いものはなにかを帳消しにする力があるのではないかな、と(異論は認める)。