横浜の港に面したところに横浜税関本関があり、土曜が公開日で神奈川県内に用があったのを奇貨として見学してきました。
いまの建物は昭和4年(1935年)築で、しかし関東大震災後の建築なので鉄骨鉄筋造で耐震化など改修しつつもいまも現役です。長方形の角の一つを面取りしたような5角形の建物で、なお面取りした方角には大さん橋があり
面取りした方面を向くように塔屋があります。この塔屋の半円のアーチの形状はあちこちにアクセントとしてとりいれられてて
港側ではない車寄せなどは半円のアーチ型が3連続するように設計され、さらに最上層階の窓まわりのデザインは下層階の長方形と異なりなぜかすべて半円のアーチ3連続で統一されています。ベージュ色のタイルが貼られててどこかモダンな雰囲気があるうえに、半円アーチの曲線と、道路に植えられてる棕櫚もあいまって横浜税関の外観はどこか柔和で非日本的な印象を見る側に与えます。余談ですが横浜港のそばには神奈川県庁、横浜税関、開港記念館と塔がある建物が三つありそれぞれにキング、クイーン、ジャックと名付けられてて、税関がクイーンと称されるのはおそらく柔和な印象を与えるからかなあ、と。
なお館内の通路にも半円のアーチの意匠があったりします。
公開されていた元貴賓室である特別会議室は一見洋風なのですがよく見ると天井は格天井で純洋風ではなく上部が和風で下部が洋風の帝冠様式っぽく
鉄筋鉄骨造ですから木の柱はありえないのですが木っぽく仕立てられた柱に付随して漆喰で持ち送りの装飾がなされていて、さらに持ち送りの漆喰の上の長押と天井の長押の間に細工された金具が嵌められていてそれが菊の紋章つきで、つまり上部に和の要素がねじ込まれていて、おそらくやんごとなき方々を迎える空間であったのかなあと推測するのですがこの元貴賓室は結果的に和とも洋ともつかぬごった煮のなんともいえないちょっと不思議な空間になっていました。ただ細部を見学すると時間が溶けてゆく程度に見ごたえはあったかな、と。
ほかに旧税関長室等も見学したのですが
床の一部がサクラやチーク材やブナなどによる寄せ木造りになっていて、管轄内に寄せ木細工で有名な箱根町を抱えてるので、あっても不思議ではありません。不思議ではないのですが、そしてわたしの頭の不自由さの自白になるのですけど、デザインによっては決して和風っぽくならないのが目からうろこでした。
ところでさきほど戦前の建物と書きましたが
増築も外観に影響がないよう適度にされています。
なお館内には業務の紹介コーナーがあって、たとえば偽ブランド品が流入しないようにするのも税関の役目で
偽物と本物がならべてあるのですが
どちらが本物でどちらが偽物かはシロウトにはまったく区別がつきません。どっちなんだろ?などと話していて、どこかに正解があるのかな、説明文を探していると「正解も教えることはできません」と書いてありました。本物の見分け方を教えたら真似されるわけで、そりゃそうだよな、と。
最後にくだらないことを。
税関にはゆるキャラがいてカスタム君といい、館内の特設売り場でぬいぐるみが飛ぶように売れていました。
しかしながら同じ空間にミャクミャクと並べるとなぜだか完全に喰われちゃってる感があり、なんだろ、ミャクミャクって不思議な造形をしていると思いました…って税関からちょっとズレちまったのでこのへんで。