積みっぱなしの本を横目に

子供の頃に山梨の塩山というところによく行っていました。中央線は高尾から山の中を走りそれが途切れるのが塩山の手前の勝沼で、水田は皆無ではありませんがわずかで、勝沼はいまは勝沼ぶどう郷というのですが、お察しの通りそこは一面のブドウ畑です。日本の美称としての豊葦原瑞穂の国という言葉を知ったのは高校生の頃で、稲作に縁遠いのでその美称に違和感を感じていました。ここ数年、網野善彦という山梨出身の歴史学者の著作を読んでいて、伏流水のように流れているのは稲作以外の漁業や商業を含めた視点からの稲作中心史観批判で妙に納得することが多くしかし没後20年を経過し手に入りにくい本もあり、なので網野さんの著作は見つけ次第、なるべく買うようにしています。そして残念ながらこれを書いているのは高等遊民ではなく労働者で読書時間もそれほど取れずにいて、その結果、読んでない積んだままの本が網野さんの本を中心に溜まってきてしまっています。

本を積んだまま溜めてしまうと発酵して発煙しかねないので…というのはウソですが、積んだままの本を眺めてるとなんだか夏休みの宿題をしなくちゃいけないのにしてないときのようなソワソワ感が増します。ここで今週のお題「この夏のプラン」を引っ張ると、読みかけや読んでない本を最低でも3冊は読み終えたいところであったり。

1冊目。いま読みかけなのが『列島の歴史を語る』(網野善彦・藤沢網野さんを囲む会編・ちくま学芸文庫・2014)です。遊行寺等で複数回行われた講演と藤沢の読者による質疑とその応答を本にしたものなのですが、その質疑応答では「教科書ではムラが大きくなりクニになったという記述だけど、単純にムラが大きくなったのがクニなのか、国家の最低条件はなんなのか?」(P46)とかきわめて根源的かつ刺激的な内容があったりします。また租庸調のほかに律令に規定のない贄がありなぜ贄を負担したのか?負担があるから自由があったのではないか?(P211)等講演の内容もいくらか難解でありつつも目からウロコの部分があり、メモを取りつつ行ったり来たりしながらページをくくってるのですが、なかなか読み終わりません。でも夏の間に咀嚼しながら書いてあることを理解したいところであったり。

2冊目。いまMXで『逃げ上手の若君』という北条時行を主人公にしたアニメをやっていて録画して視聴継続中で、いくばくかの興味を持ったので北条時行が関係する史実について書かれた『中先代の乱』(鈴木由美・中央公論新社・2021)という本を買っています。北条時行の生涯について詳しく知らず、くわえて逃げ上手の若君の原作も未読なのでネタバレになってしまうのが悩ましいのですが、史学専攻ではないので知らぬ知識をすこしでも補完したいところがあったり。

3冊目。やはりここ何年かずっと追い続けてる青ブタの最新刊『青春ブタ野郎はガールフレンドの夢を見ない』(鴨志田一電撃文庫)が9日に出るので入手でき次第、万難を排して読むつもりです。最終章突入と予告されてて終わりが近づいているのが寂しくないといったらウソになりますが、新刊が出るたびに度数の高いアルコールをあおるようなヒリヒリ感を楽しませてもらってるので期待のほうがデカかったり。

(本をたくさん読む人からすると笑われそうなくらい少ないはずなのですが時間が残念ながらとれぬので)目標は以上の三冊です。が

・『宮本常一「忘れられた日本人を読む」』(網野善彦岩波現代文庫

・『評伝・開高健』(児玉武・ちくま文庫

・『狐花 葉不見冥府路行』(京極夏彦KADOKAWA

あたりもかなり気になっていて手を伸ばしたいところであったり。

積んだままの本を眺めてるときやこんなふうに読みたい本について考えているとき、すべてをうっちゃらかしてカバンに本を詰め込んでどこか遠くへ行きたくなるのですが、残念ながらそういうわけにもゆきません。これ以上書き続けるとなんだか危険な気がするのでこのへんで。