ずいぶん前に勤務先で悪評をたてられたことがあります。異性を結果として門前払いしてしまったとき報復として金銭について事実でないことを噂としてたてられ(Excelで桁区切りを稀に忘れることがあってもガラス張り対応であることを周囲は知っていて誰もが半信半疑で)その噂を私はほぼ知らずにいて、しばらくしてこういう噂があんねんけど?と問われ、つい吹き出してしまって「叩いてもほこりも出ないですよ」と告げて調査には協力したうえで煙も火も出なかったのですが、悪評をたてられたとしても事実でなければ消えちまうのだな、という体験をしています。でもこれは個人的体験に過ぎません。
悪評をたてられたとして、それを聞いたほうは印象が左右しちまって、事実でなくても誤信してしまうことがあったりします。雑なことをいえば、事実無根であることが証明しにくい場合、たとえば小さいらしいという噂をたてられて事実巨根です、という証明をするわけにもいかないような場合、どうすればいいのか?というとその問いは私には難しいです。
話がいつものように横に素っ飛んで恐縮なのですが、民事訴訟法というのがあって、ものすごく大雑把なことを書くとおのれに有利な事実については立証する責任があります。でも書面を読んだり証拠を眺めて互角で債権者債務者どちらかを勝たせたいと迷うとき、裁判官はなにによって判断するのか?というと正直、民事訴訟法の範囲外でわかりません。でもおそらく「勝たせたい」と思ったほうなんだろうな、という推測をしています。「勝たせたい」と思わせるにはなにが必要か、といったらもうこれは正解がありません。
話を元に戻すと民事訴訟でなくても、AとBのどちらの云ってることが正しいか判断がつきにくく正直わからない場合、無意識に「勝たせたい」と思ってるほうを信じてしまうことが有り得るはずです。でもそれが事実無根であったとき、悪評を信じるかどうかは悪評を立てられた側を「勝たせたい」という点に掛かってるとすると、否定すればするほど「悪評を気にしてる」「ムキになってるという」印象を与えてしまいかねなくて、それが「煙の無いところには火が立たない」的な印象を与え逆効果になりかねない怖さがあります。すごく厄介です。
時間に余裕ができたときに「ああこの人が出てるのなら…」と幕見席から眺めていた歌舞伎役者の初公判の報道を眺めてて、決して良い方向ではない取り上げかたをした週刊誌の記事について、世間に信じ込まれることを怖れていたともとれる記述がありました。じゃあどうすればよかったのか?というと、解はやはりわかりません。ので、追いつめられるのが手に取るように理解できた気がし、その数秒後、それが贔屓目であることに気が付いたのですが、匿名を奇貨として書くと、やはり相変わらず冷静になれてなかったりします。
冷静になってない文章ほど理屈がなく読みにくいものは無いと思うので、このへんで。