駅の案内表示にまつわる問題の雑感

夜の報道番組を視聴していると陰陰滅滅としてくるので同じ時間帯にアニメを流しているMXにチャンネルを合わせてる時期がありました。一昨年MXで放映されていたのが「宇崎ちゃんは遊びたい」です。最初に偶然視聴したのが桜井先輩がチョコミントを歯磨き粉と形容し宇崎ちゃんが激怒する回で、激怒のあまり大学構内で演説がはじまるのですがけっして緻密な論理構成ではないにもかかわらず、つい手を止めて聴いてしまっています。そのとき妙に印象に残ったのが

「わたしが許せないのは自分が理解できないものは迫害していいと思ってる連中の思い上がり」

というフレーズです。理解できないものを前にしたとき理解できないものにまつわるすべてを迫害し否定してしまうのは簡単ですが理解のきっかけを永遠に失いかねず悪手のはずで、思い上がりという糾弾もなんだか的を得てると思ったのです。また「自分が理解できないものは迫害しても良いと思ってる」人というのが身近に居らず想像つかなかったものの、居てもおかしくないかもしれない…などとも漠然と思っていました。

いつものように話は横に素っ飛びます。

東京ローカルな話で恐縮なのですが北千住から築地や銀座を通って中目黒へ通じる日比谷線という地下鉄が走っていて、途中の六本木からそれほど遠くない狸穴町にはロシア大使館があるせいか、JRと日比谷線の交点である恵比寿駅にはロシア語(キリル文字)で「中目黒」「六本木」と書かれた案内表記が以前からありました。ところが昨今の理解しがたいロシアをめぐる情勢の変化のあとクレームがあり、そのキリル文字表記がいったん消え、そして再度復活する事態が起きています。繰り返しますがキリル文字で書かれたのは地名の表記でその表記がなぜクレームの対象になってしまうのかが最初は意味がわからなかったのですが、現在のロシア政府への憎悪が増幅し、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いみたいなものか、と想像しています。バカバカしいと感じつつちょっと怖いです。

案内表記の一時撤去を迫害というのは正直なところいくらか飛躍があるかもと自覚してるのですが、報道を読みながら宇崎ちゃんが糾弾していた「自分が理解できないものは迫害していいと思ってる」人って確実にいるのかも、という印象を個人的には持ちました。宇崎ちゃんの物語は比較的笑えるフィクションですが、宇崎ちゃんの居るフィクションの世界よりいまの東京の事態は比較的笑えぬ気が。

以下、くだらないけど切実なことを。

私は現在のロシア政府の動きには以前から賛意を示せぬものの、ロシアにまつわるすべてのものへの敵意は間違ってると考えます。贔屓にしてるパン屋のピロシキだけはずっと食べ続けていたくて、バカバカしい糾弾がピロシキに向かうことがないように願うばかりであったり。