「その着せ替え人形は恋をする」8話を視聴して(もしくは巧く言葉にできない説明の力強さ)

コスプレをしたい喜多川さんと裁縫が出来る五条くんを中心に物語が展開する「その着せ替え人形は恋をする」8話を録画して視聴しました。いちいち報告する必要があるかどうかわからぬものの、何も書かずにいるのがなんだか惜しいので、書きます。

いつものようにいくばくかのネタバレをご容赦願いたいのですが、脅迫ののちコスプレ衣裳制作を依頼した乾さん(=ジュジュ様)が五条くんに問われてなぜ頼んだのかを語るシーンが8話にはありました。乾さんは考えながら・言葉を探しながらももきちんと巧くは説明は出来ず、喜多川さんのコスプレ画像(=五条くんの作った聖ぬるぬる女学園お嬢様は恥辱クラブハレンチミラクルライフ2の黒江雫ことしずくたんの衣裳を着た喜多川さん)が目にとまったこと、羨ましかったこと、そして嫉妬したことを告白します。その上で

「どうでもいいものに嫉妬しないでしょ」

とも

「ひとめ惚れ」

とも述べます。最初に断定があって断定ゆえに説明が続かずあまり説明になっていないしかしそれゆえに力強いそれらを聞いて、五条くんは幼き日に見惚れた祖父の作品に対して口にした言葉を思い出しつつ、幼き日に祖父の作品に述べた言葉の趣旨と同じことをおのれの作品に言われてるのに気が付き、(おそらくはうれしくて)涙を流します。問われて言葉を紡いで答えた挙句に年下の男子に泣かれてしまってなにが起こったのか咄嗟に理解できず怯んでしまった乾さんからするといい迷惑でそしてそれが作品としてコメディになってるのですが、巧く言葉にできず理屈ではない断定や説明になってない説明を聞いた方がどういうように心を動かされたのかについて丁寧に描写してて、視聴してるこちらも納得できる構造になってるのがとても良かったです。映像だからできることで唸らされています。個人的なことを書くと私は断定があって説明になってない説明というのが好きではない(というかイヤな)のですが、今回はイヤになれませんでした。

もういくばくかのネタバレをお許しください。

8話後半では最初に断定があって(詳細は原作かアニメでご確認いただきたいのですが)理由が理由になってない理由で喜多川さんに連れられて五条くんは藤沢へ行き、喜多川さんに誘われて五条くんは片瀬の海に入ります。五条くんは波が引くときに足裏の砂も一緒に消えてくことに戸惑いを隠さずにいて、その反応から「海はじめてかよ」と喜多川さんがからかい半分に問うと、五条くんははじめてであることを正直に告白します。知識としては知っていた海の体感の感想を述べつつ堪能し、それまでの過去や祖父に人形以外のものも見ることをすすめられたことを語り、それを聞いた(下心があったかもしれぬもののおそらくはほぼ衝動的に)喜多川さんは2人でいろんなところへ行こうと誘います。それに五条くんがどうこたえるかは原作やアニメで確認していただくとして。「着せ恋」はコスプレをする喜多川さんや乾さんに目が行ってしまいがちですが、後半の片瀬の海のシーンを眺めてて喜多川さんによって視野が拡がり新たな体験をして変化する五条くんの物語でもあるのだな、と改めて認識しました。でもって人は可塑性があると教えられたせいか、それを地で行く五条くんをフィクションと知りつつも保護者目線でいつのまにかみちまっています。

さて、8話では乾さん(=ジュジュ様)は成りたいものになるためにコスプレをしてることを告白します。コスプレは自己実現なのです。対して喜多川さんは1話では「コスプレは推しへの究極の愛」と語りました。コスプレは意思表示なのです。メイクをして衣装を着ることで何者かになる点では一緒なものの考え方の相違が興味深く、「装うことって奥深いなあ」と思わされています。

それに付随して、以下、くだらないことを書きます。

「着せ恋」は着ているものが重要なのでコスプレ衣裳もひな人形の装束もきっちり描かれています。片瀬の海で喜多川さんのスカートの中が風にめくれるシーンがあったのですが、なにがとは書けぬものの柄まで丁寧に描かれているのに気が付きました。そこまで必要かな?と疑問に思いつつもクレイジーなまでの手の抜かぬこだわりにいくばくかの狂気と作品への愛を感じています。

相変わらず物語の進め方が巧く、最後まで飽きずに視聴しました。次回もたぶん見ちまうと思います。