黒塚もしくは鬼のはなし

歌舞伎の黒塚という演目に鬼が出てきます。奥州安達ケ原で山伏たちが老婆の住む小屋に一泊し、老婆はなぜ奥州に居るのかや一人で小屋にいるのかなど語りつつ仏教の話になり、仏教の話に触れた老婆が寝床を覗かぬようにと釘をさしつつ山伏たちのために薪を探しに行き、老婆の居ない小屋の中で随行の山伏が寝床を覗くとそこには大量の死体があり実は老婆の本質は鬼で、逃げ出した山伏たちを老婆が目撃し何が起きたか悟った老婆は鬼の形相で彼らを追う…という話で詳細とどうなったかの結末はぜひ歌舞伎座などでご覧いただきたいです。

はてな今週のお題が「鬼」です。鬼というとどうしても桃太郎の悪者退治のイメージがあってなんとなく鬼≒悪という先入観をもっていたのですが、黒塚を歌舞伎で観たあとはそれが揺らぎました。どうしてもひっかかるのは「覗くな」という老婆の願いを叶えなかった・隠していたものを露わにした山伏の従者で、信用したのに希望がかなえられず裏切られた時、そして隠したいものがあるときにそれを暴こうとされる時、人は人ではなくなりやすいのではないか?とか考えてるうちに・知らないうちに鬼に同情的になってます。

鬼ってなにかはわからぬものの鬼が人として正常な判断ができない状態ならば、私は性のことで隠したい事柄があって継続してて、でも隠したいものを暴かれたら正常ではいられない確信があって、もしかして私も鬼に容易になり得るのではないのかな、という気が。

ところで大江戸線に乗ると「鬼殺し」という銘柄の酒の広告が車内に長いこと継続して掲示されてます。その名前のお酒の存在は歌舞伎を観るようになる前から知っています。実際、ヨーカドーなどでも扱ってはいるのですがなんだかずっと手に取ってはいけない気がしてならず、ながいこと避けていました。私の本性は鬼なのかもしれず、もしかして鬼の本能として避けてたのかも(冗談です)