9日朝、セブンイレブンの店先で

アニメをそれほど観ずに育っているのでゲゲゲの鬼太郎もあまり視聴していません。かろうじて覚えてるのは吉幾三が歌ってる時代のオープニング曲ぐらいです。彼氏の家でチャンネルを変えてるときに偶然目撃した昨今の猫娘にびっくりし吉幾三時代からそうだったか疑問なのですがちょっと自信がありません…って猫娘美少女化の話をしたいわけではなくて。

鬼太郎も詳しく知らず、妖怪にはあまり関心がなく、なんとなく妖怪は怖いものである、という認識を十代後半まで持っていました。それが変わったのは那州雪絵さんの(「フラワー・デストロイヤー」に載っていた)雪女の短編を読んでからです。いくらかのネタバレをお許しいただきたいのですがその短編は、田舎の山中で迷った小さかった主人公は雪女に遭遇しその雪女は口外しないことを主人公に約束させてその主人公を救い、大学生になった主人公が東京に出てからなぜかそのときの雪女に再会する、というのを軸に話が進みます。もちろんそれだけではなくて詳細はなんらかの方法でお読みいただくとして、その短編で、妖怪というのは人をむやみに怖がらせたりするわけではないのだ、ということを知りました。もっともそんなこと今日までさっぱり忘れていました。繰り返しますが妖怪にあんまり興味がないからです。でもって、昨今話題になってる、疫病を予言し疫病になったら疫病退散のために私の姿を描いた護符を貼るが良い、といったらしい妖怪のアマビエのことも毎日新聞で読んでいます。でも妖怪に興味がないのでやはり今日までそのことをすっかり忘れていました。

いま住んでいるところから最寄り駅までセブンが2軒あります(さらにファミマもある)。今朝、そのうちのセブンの1軒を通り過ぎたとき、いつもと違うというか、なんとなく違和感を覚えました。そのまま通り過ぎてもよかったのですが妙に引っかかって3歩ほど戻って確認した違和感の正体は、店の外に見えるように貼られたおそらく近所の子供たちが塗ったであろう数枚のカラフルなアマビエの塗り絵でした。仮説と検証を繰り返しデータに基づいたシステマティックな商売をするセブンの店先に貼られた数枚のカラフルなアマビエが不似合いで妙におかしくて吹き出しそうになるのを堪えながら今朝は駅まで歩いています。

そのセブンの店先を通り過ぎるまで仕事上抱えてることについてあれこれまとまらないまま考えてていくらか鬱々とした気分でいたものの、アマビエのおかげで鬱々を含めすべてが一時的に吹っ飛んで、この歳になってはじめて妖怪に間接的に元気づけられてます(人が妖怪に元気づけられることってあまりないと思いますが)。アマビエ、あんがい良い奴かもしれません。今朝は疫病を退散できたらいいなと単純に思えましたし、アマビエのついで雪女についても思考が及び「あったことはないけど雪女も根は悪くない奴だったしな…」と非科学的なことばかりが電車に乗るまで脳内を占めていました。

いま住んでいる街にもコロナ感染者がいること・ここ数日は少ないながらも増えてることは都庁の発表ではっきりしてて、きわめて非科学的なのですが、いま住んでる街のアマビエはおそらくその関連のはずで、ほんとは笑うべき状況ではないかもしれませんしもしかしたら不謹慎かもしれません。不謹慎を承知で書くと、アマビエも雪女もフィクションかもしれぬもののそのフィクションのおかげで明るい朝となり、余勢でしんどい状況の一日をなんとか乗り切れています。フィクションって大事だよなあ、と改めて思ったり。