NHKスペシャルで今夏もピカドンのことをやっていたので視聴しました。直接ピカドンの被害に遭ったわけではない被爆二世の関しての特集です。実は広島へは何度も行ってるのですが平和記念資料館は未訪でせめてNスぺだけは追っておこうと視聴しました。
日本の敗戦後、アメリカが広島に設置した機関であるABCC(原爆傷害調査委員会)は被爆者だけでなく、(報奨金などを出すことで)助産師を通じてピカドン後に妊娠出産の新生児や死産した子のデータを米国は集めていました。念のため書いておくとこのABCCは検査はするけど治療はしない機関です。アメリカが気にしていたのは「ショウジョウバエに放射線を当てるとごくまれに突然変異がおきるが、人でも起きるのか?」という点です。戦後直後は自宅出産であることがあり、被爆直後の広島市でおよそ65341人の新生児のうち出産時に障害を負った新生児が594人、対して東京の日赤などでおよそ49645人の新生児のうち出産時に障害を負った新生児がおよそ456人で、率に直せばほぼ広島も東京もそれぞれ0.91%と0.92%、ということがわかっています。
ただし被爆二世の小児の白血病患者の例を番組内で紹介しています。いまなお遺伝的影響に関しては懸念は払しょくできていません。また子や孫に恵まれた被爆2世当事者の声のひとつとして、新しい命の誕生を迎えるたびに言いようのない不安に襲われてきたことを紹介していました。厄介なのは「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(被爆者援護法)というのがあるのですが、被爆者は直接被爆(1号)、投下後2週間以内に広島市長崎市に入市(2号)、被爆者の救護などで放射能の影響を受けるような事情の下にあった者(3号)、胎内で被爆(4号)と定めているので、ピカドンのあとに妊娠、出産した被爆二世はなんらかの症状がでていて健康に不安があっても給付等はなくかやの外のはずです。被爆の遺伝的影響に関して完全に否定できないのであるならば国が対策を講じるべきであるとする集団訴訟も提起されてるのですが、国としては親の放射線被曝によって被爆二世の健康に影響が生ずることを示す科学的知見は存在せずという立場を崩していません。
最後にABCCの後継組織の放影研でゲノム解析による放射線の遺伝的影響に関しての研究を計画中であることが紹介されていました。NHKの言葉を借りれば「原爆放射線の影響は遺伝しているのか?」という問いの答えにつながる研究です。約1000家族ほどの被爆者とその子供の血液試料などが半永久的に凍結保存中でそれをゲノム解析に用いたい意向であるようです。正直に告白すると後世のために進めるべきだと思いつつ画面を眺めていたのですが、調査に協力した被爆二世の方の「遺伝的影響があるとしたらいまからの子供たちは不安を持ってしまうし、ないって言われたら遺伝的影響がないのでいざなにかがおきたときに(ピカドンを)つかっていいというふうになるのもやっぱり嫌だ」という独白があり、その独白を聞くまで気がつかなかったのですがきわめて難しい問題のはずです。73年経た今でも苦悩が続いてることを改めて思い知りました。
なお8月9日午前1時05分から再放送があります