本を読んだ感想ではありません。読まずに語ります。
もう20年以上前の(たぶん阪神大震災より前の)毎日新聞の連載小説に「藏」というのがありました。越後の酒蔵を舞台にした宮尾登美子さんの作品です。その連載小説を読んでいた母は「小説の主人公がダブってみえていた」と言いました。主人公の烈と私を重ねていたという趣旨です。当時「藏」を読んでいなかったのでどう返答していいのかわからなかったので「単行本になったら読む」と答えると、コイツは読まないだろう…と考えたのか「これはと思える人のそばいることができるのならそのほうが良いんだよ」と続けていわれたのを覚えています。もちろんそのときはぴんとこなかったのですが親が子にそれも小説についてなにか言う機会なんてほとんどなかったので以降ずっとひっかかってます。映画になってるのでご存知の人がいるかもですが、烈は女の子です。念のため書いておくと私は男です。両親はともに東京の隅田川べりで越後に縁はなく、父は伊予三島というところの会社に誘われつつもそれを蹴って機械系の会社に勤務してて東京に家族と一緒にいて、もちろん実家は酒蔵でもありません。どこを切り取っても烈と私はつながりはまったくありません。ただ烈は途中、眼病になります(きちんと読んだことはないもののそれだけはあとで知った)。私は右目が良くないのですが矯正すれば左目をつかって日常生活はできてます。烈との共通点はもしかしたら目に起因するのかもしれません。はてなの今週のお題は「おかあさん」なんすが父も母もこの世に居ないので真意を訊く術はいまはもうありません。ほんとは「藏」を読んだほうが良いのかもしれません。が、小説はフィクションですが私にとっては目が悪くなる話はリアルすぎてなんだか怖くて読めていません。
親が生きてる間に異性と婚姻することもなくもちろん孫の顔を見せることもできていません。そういう意味ではたぶん世間からみたら親不孝者で、親に関して書くときには若干のうしろめたさがあったりします。
ただ週末に逢う相手がいてメシを作って食べてるときにうっすら表情が変わると嬉しかったりします。母の云おうとしていた「そばにいることができるのならそのほうがいい」ということはこのことなのかな、と思わないでもなかったり。確かめる術はありませんが。