欽ちゃんのアドリブで笑コントライブ90分スペシャル!(追記あり)

NHKBSでやってる萩本欽一こと欽ちゃんの、コント・軽演劇に関するノウハウを小倉久寛劇団ひとり中尾明慶といった俳優陣にワークショップ形式で教える番組の4回目があったので録画したものを視聴しました。
冒頭は欽ちゃんと若村麻由美さんと前川清さんが加わって刑事物のコントからはじまりまりました。ダメ出しはまったく無かったわけではないのですが流れを大きく止めることなく進行しました。というかあたりまえのことなんすが、指導してるよりも実際共演してる方が欽ちゃんは生き生きしてます。前川さんと欽ちゃんが凶賊に化けるコントでは無言でアクションだけでしばらく空間がもっていました。前川さんと欽ちゃんは昔同じ番組でコントをやっていたらしいのですが、歌手の一面しか知らないので目からうろこだったのですが。もっとも前川さんのいないいくつかのコントでは欽ちゃんは「マジな芝居をしろ」と檄を飛ばすこともしていました。根っこはベースとなるものがあって、そこから変化させることで笑いが生まれるからです。
コントも興味深かったのですがそれ以外の部分も今回興味深かったです。過去3回で欽ちゃんが指導していたときに口にした「なにがいけないってみんなセリフで云うの」「ほとんどセリフでまとめようとするのね。これを動きにするようにするとたいしたもんだ」「最近の人はみんな笑いをしようとするのねいい芝居をまずしっかり作る、そこからじゃないと笑いができない」といったことを切り口に、芝居について深く掘り下げていました。仲代達也さんが出た回の未放送部分なのかそれとも新たに撮ったのかは不明なのですが、縄に縛られてつれていかれる罪人のコントを題材に縄に縛られてつれていかれる罪人を仲代さんが実演してみせたのですけど
「(つれてかれる罪人の)セリフを疑問形にして」
「捕まってもしょうがない(かと諦めがある)場合」
「ほんとにやってないのにつれていかれてしまった場合」
「後ろに女房がいる場合」
「後ろに女房が居てなおかつ筋肉痛の場合」
と欽ちゃんがその場で振ったところ仲代さんは難なく演じ分け・足のさばき方はすべて異なり、相応に迫力があり芝居になってて、なおかつ笑えてしまうのです。ちゃんとした芝居の上に笑いがあることを実技でみせられるとやはり唸ってしまいます。
別途、仲代さんと欽ちゃんの対談もあり聞き入ってしまったのですけど、「いまテレビではセリフで動きをみせなくなった」という欽ちゃんの話のあとに仲代さんが無声映画の時代のチャップリンについて振ると欽ちゃんはチャップリンのあるく動きを真似て見せ、歩く姿に間が入ることを・芝居になってることを実例で示していました。ここらへん欽ちゃんの育った浅草の軽演劇がなにかということにもつながるのですが芝居というのはやはり言葉以外も重要なファクターであることがシロウトにも理解できてきます。
もうひとつその対談で目からうろこだったのは、仲代さんが演劇では「間あいや落ちというのを出来上がったセリフの中で作ってゆく」と述べると欽ちゃんは「いまテレビでやってるものはみんなオチがあるんですよ、我々ね、オチがあるコントをやらないんですよ、いきつくところがお客さんが笑ったところがオチという」と答えててそもそもオチの発想がそもそも違うというか、そこらへんが放送4回目にしてやっと理解できました(仲代さんの語る演劇との差異を知り、欽ちゃんの目指すところが不完全だけどよりうっすら判ったというか)。台本もリハーサルもなしであることを踏まえて考えると、でている俳優陣が真剣に悩んでいるのを過去の放送で視聴しましたが、その悩みが手に取るように理解できました。繰り返しになりますがNHKBSのこの欽ちゃんの番組の難点は、欽ちゃんがすべて正解を握り、欽ちゃんが要求するものに対して出演者が反応することで、反応した出演者を通じて視聴者が欽ちゃんの云わんとしてることを理解するような複雑な構造をしています。欽ちゃんがあたりまえだと思っていることを欽ちゃんはあたりまえゆえに説明しにくく、その上で、欽ちゃんはいまは誰もいないところで一人で軽演劇のスタイルを守り続けて、その特殊性ゆえに発想がわかりにくいところがあります。その欽ちゃん以外ほとんど誰も知らない未知の世界へ4回で行こうっていうんですから、ちょっとムチャだったかもしれません。みてるこちらは傍観者として濃い空間を堪能できてありがたかったのですが。
いちばん最後に「縄に縛られてつれていかれる罪人」のコントのあと、欽ちゃんは4回を振り返って「正直言って、この芝居に行ってくれたらいいなと思ってそこに至ったものはひとつもありません」と告白し「そこに行こうとするみんなに感謝します」と俳優陣に述べていました。やはり短期間では難しかったのかもしれません。願わくば歌舞伎や狂言などの身体をつかう表現との差異を比較しながらの延長戦を期待しちまったり。難しいかなあ。