南極まつり

東京の西の立川というところに極地研究所があります

でもって南極まつりというのをやっているので、寄り道しました。

祭りっていっても第一線の研究者が研究の成果を一般人にかみ砕いて説明するお祭りなのですが、オーロラの研究に関してというか磁気嵐に関してけっこう興味深いお話がきけました。
オーロラのうち何割かは、太陽の表面の爆発活動が影響して出てくるものです。黒点ってきいたことがあるかとおもいますが黒点は太陽内部の磁場が太陽表面にまで出てくる部分で、そこで磁場のエネルギーが蓄積され突発的にエネルギーが解放される現象である太陽フレアってのがおきます。そのときに電波や電子や陽子などの電気をおびた素粒子が飛び出してきちまい、それらの素粒子は地球に少なくとも2日後までに飛んできちまい地磁気を乱して磁気嵐をおこします。磁気嵐の結果のひとつがオーロラです。で、太陽フレアがでかいのがあると磁気嵐もでかいのが来てオーロラが低緯度でも観測できる、と考えられていましたが2015年に北海道でオーロラが観測されたものは太陽フレアが小っちゃくでも磁気嵐としてはでかかったことがあって、それに関して極地研は地球に届くまでに複数の太陽風(太陽から出るプラズマ等)と玉突き事故状に重なって巨大化したという研究結果をだしています。つまるところ小さな太陽フレアでも巨大な磁気嵐を起こしちまう可能性がある、ということまでわかっています。で、影響としていちばん厄介なのは磁気嵐によって磁気に変化が起きちまうと地上の金属に電流を流す力が発生しちまうので場合によっては巨大な金属でできている送電設備などに被害が生じちまいます。ここらへん、目立たないけどどんどん研究を進めてほしいところなんすけど。
でもって低緯度でもオーロラが観測されることがあるということに関して、極地研の近所に国語の研究所があってそこに依頼して古文書にでてくるオーロラに関する記述(もちろんオーロラという言葉はないですけど)を紹介してもらったら藤原定家の明月記や日本書紀(推古帝のころ)にも記載があり、近畿地方で観測されていたことが判ってきたらしく、ちょっと唸っちまったんすけども。

南極から出てきたグロソプテリスというシダ類の植物の葉の化石です。思わずなんでシダ類があるのですかと質問したのですが、南極大陸は今の位置にあったわけではなく、

ゴンドワナ大陸時代には赤道周辺にあって、そのときの名残です、とのこと。インドや南米でも同じものが見つかります。ついでに書いておくとシダ類でもどうも大木であったらしく、さらに二酸化炭素濃度がいまとは異なっていたはず、植物相もいまとはちがっていたのではないか、などと補足説明も受けました。私は物理はともかく地学はやってないので基礎的なことが欠けてるのですが、面白そうだなあ、地学。

当然、同じゴンドワナ大陸だったインドとかと似てるのでサファイヤ(を含む片麻岩)ってのもでてきちまうようで。ゴンドワナ大陸とか大陸移動説とか断片でしかなかった知識が脳内で統合するとすっごく興奮しました。

研究とはまた別に話になるのですがわりと興味深かったのは昭和基地の建築です。ある一定の方向へ(北東に向けて)しかほぼ風が吹かず、さらに降雪時にブリザードがやってくると吹き溜まりになるのを防ぐため、いくつかの建物が高床式にして雪を逃がす構造にしてるのだとか。でもって万一燃料を運べなくなってしまう事態に備えて燃料等は2年分の備蓄を可能とする設備になってるそうです。想像以上に過酷な環境ってのがよくわかりました。

南極の氷です。南極の氷は低温で溶けることがありません。何万年前かの空気がそこに閉じ込められてるので、うまく取り出せば何万年前かの気候状態を知ることができ、いまでは二酸化炭素濃度が氷期間氷期に連動して変動していることが判ってきたのだとか。触らせてもらえたのは研究用ではなく適当に持ってきたやつなのでいつのだかはわかりません、ってな説明でしたがちゃんと冷たかったです。水を入れて溶けるときの音というのも聞かせてもらったのですが、柄にもなく、何万年前だかの空気かあ、とちょっと感動。
極地研、興味深かったです。「みなさんの税金を使って」っていう言い方をなさってた研究者の方も居たのですが、願わくば萎縮することなく研究を深めてほしかったり。

立川にはIKEAがあって寄り道してしまいましたが目的地はここでした。来るといったん入るとなかなか出てこれないところなんすが、買うつもりがないものでもみていて欲しくなっちまうのは、罪作りだよなあ、と思っちまうのですけど。