無印の靴下

小売業者ではプライベートブランドというのを作ることがあります。メーカーに仕様書を渡して一定量製造したら小売業者がすべて引き取る条件で自社のブランドをつけて売っています。アピタピアゴへ行くとスタイルワンというのがあって名古屋のイチビキの醤油がスタイルワンの名前で売っていたり、という具合です。
米国の大手流通業者だったシアーズも独自のプライベートブランドを持っていました。たとえばカメラであれば既存のカメラを研究したうえで「高速のシャッターはいらないからそのぶん安くできないか」といったアプローチでシアーズは商品開発を行っていて、シアーズと提携していた西友シアーズの商品開発の手法をヒントに独自開発したのが無印良品です。干し椎茸の利用法の何割かは出汁をとるためのものならば別に椎茸のかさは欠けていてもかまわないであろう・軸は曲がっててもよいのではないか、ということをもとに、既存の干し椎茸製品と異なり選別の手間を省いて袋詰めし、その分価格を抑えて干し椎茸を商品化したりしました。いちばん最初はシアーズの影響からか無印は「わけあってやすい」というキャッチフレーズを基に出発しましたが安さは必要条件だけど絶対条件にしませんでした。それができるのは西友はかつて無印とは別に安さを絶対条件にした「SEIYU LINE」(いまでは「きほんのき」)というプライベートブランドがあったからかもしれません。
安さを絶対条件にしなかったので価格競争という点では不利です。でも安さにこだわらない商品を作るノウハウがあります。たまーに不思議なことをします。わかりやすいのは靴下です。はんぱものの糸を集めて靴下を限定生産したこともあります。いまでも直角靴下というのがあるのですが、よそにはあまりない直角に曲がってる靴下があります。安いか、というとそれほど安くはありません。でも締め付け感がなくずり下がりにくいものです。住んでるまちの西友の無印の売り場が食品売り場からアプローチしやすく、かつ夜おそくまでやってて、直角靴下は偶然西友内の無印で買ったあと継続購入しています。他社に比べてその靴下は安いか、というと安くはありません。でも相応の価値に払う対価としては満足できるレベルです。
ここで無印はじわじわっと値上げをしています。それが吉と出るか凶と出るか、ちょっとわかりません。消費者としては安いほうがありがたいのですが、いままでにない製品を作るカルチャーは残してほしいので、やむを得ないかなあ、なんて靴下を買いながらレジで思っちまいました。