無用の長物

いきなり変な話ですがこれを書いてるやつは江戸期から続く名字帯刀の家の12代目くらいになります。一族の中でわたしの本名の姓の男子はおれしかいません。そういう男子が抱くこともあるかわりに抱かれることがあってもいいのか、という問題はさておき、男子という理由で刀剣2口を実は本家筋の親戚が亡くなった時点で託されました。忙しかったこともあるのですが「そんなこといわれてもなあ」というのがあって、でも捨てるわけにもいきませんからしばらくそのままにしていたんすけども。
なんのきなしにその話をとても親しい人に話をすると「警察は?」。銃刀法によって登録をしなくちゃいけないのでやっておけ、ってか警察に連絡しろ、と忠告を受けて「そうだよなー」と従ってその後警察に電話をすると所轄の人がほんとすぐ飛んできて書面を書いてくれて(発見届出済証という)、それをもって東京都庁で行われる銃砲刀剣登録審査会、というのに行くことをすすめられました。東京の場合は刀剣の場合月1で予約制です。
都庁の登録会場では鑑定のようなことをしてくれるプロと書記の人が2人一組で4つのブースにわかれてて淡々と作業が進みます。あちこちで刀が抜かれてる光景は一見の価値がありました。ちなみに私が預かっているものはひとつは天正年間(室町末期)の美濃のもの、もうひとつは江戸期のものでどこで作られたかは不明、という結果で、その結果が記載された登録書がもらえます。法的には登録書と刀が一緒であればよいようです。でもって鑑定といっても値段がいくらかというのはわかりません。刀剣登録審査会はあくまでも刀かどうか、というのを判定する場所であるからです。値段は1口6300円。
2口とも若干錆があったのですが、天正のものは比較的状況がよく、研ぎに出すといくらかかるのだろうかと思って大丸へ相談しにゆくと(なぜか大丸は刀剣も扱う)20万くらい。ううう、どうしようかなと考えて、刀がどういう由来で先祖の手許にきたのかは残念ながらわかりませんが、こういう機会じゃないとやれないよなあ、包丁と同じで刃物は研いでおいたほうが良いよなあ、と考えて清水の舞台から飛び降りるように研ぎに出しました。でも今月、出来上がったものを観ると悪くないよなあ、とは思えました。でも、いまの世の中、刀は使いみちはないのです。こういうのがザ・無駄遣いかもしれません。役に立たないものを増やしちまいましたけど、後悔はしてません。