女のいない男たち・木野

前にも書いたかもしれないのですが、村上春樹さんが質問に答えるスタイルの「村上さんのところ」というサイトがあって、はてなが協力しているせいか問答をたまに閲覧することがあります。その中である問いに答えて、きついことやつらいことを体験した時に、そのきつさを抱えていた方が良いのではないか、という答えがありました。
でもって「木野」という短編小説があります。木野さんは奥さんが浮気してるんだけどその浮気を知っても傷つかないふりをして、根っこの部分を蓋をしてるのだけどとれてしまうような、若干厄介な小説です。22日付毎日新聞に本人の解説が載ってて、そのなかで「何か新しくつかみとろうとすればプラスの分だけネガティブなものが生じ」「プラスのものを確保しようと思えばネガティブなものも代償行為として引き受けなければいけない。そうしないと人は生きてる意味がないと思う」と書いてて、おのれのあたまのなかでは上の問答と一緒になんかこう村上さんの思考回路がよくわかったというか、正論過ぎてぐうの音も出なかったりします。ぐう。「ネガティブなものに対抗するためにはポジティブなものを自分で打ち立てなければいけない。そのためにはネガティブなものをはっきりみなくてはいけない」ってのもそうなんすが。
でも、それらを実行するのにはけっこう馬力・精神力がいるよなあ、とは思うのです。私はあいまいにせず「ネガティブなものをはっきりみなくてはいけない」ってのをよくやるのですが、けっこうしんどいです。
ただ再生っていうかとりまく可変な環境を自ら作り直せるっていうか人に可塑性があるというか、それらをフィクションにのせて語るのは文学の主題として重要なんだろうな、というのはなんとなく理解できます。理解できたところで文学とは関係ないところに生きてるのであんまり意味はなさそうなんすけど。