96条のこと

憲法は時代の流れに応じて適切に変える必要があるといわれれば傾聴の価値はあると思ってて、たとえば国は基本的に私立の学校には無制限にお金を出せない建前です。憲法89条の「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」という条文があるからなんですが、前半は政教分離の徹底、後半の趣旨としては公の財産の濫費防止のためにあるという考え方と、いや事業の自主性の確保・国家の干渉を避けるための考え方だよ、というのがあります。で、実際私学に対して施設・設備等の助成はしてまして、根っこにあるのは89条は濫費防止のためという解釈で、「公の支配」というのは財政的に助成するときにその「助成が不当に扱われないようにするために必要な監督」という解釈で、公の監督が利く限りは出そう、という考え方です。でも条文からすると若干ムリがあるのではないか・誰もがそう読むとは思えないのではないか、とも思えます。憲法の条文を変えることができるのならなんらかの処置をしたほうはいいんじゃないってのはわからんでもないです。89条があっても私学の助成は26条の必要に応じて教育をうけさせる権利に含まれるから違憲にはならないとも導けるものの、この部分に関しては変えても良いのではないかなあ、と思ってはいました。政教分離と公財産の濫費防止は死守しつつ「但、公益上必要がある場合においては教育機関に対し寄附又は補助をすることができる」という趣旨の条文をどこかにいれたほうがええんちゃうかな、と。
でもなんすが。
東京新聞の5月4日の自民党議員のインタビュー記事で「へーそういうことを考えてるのか」と思ったのが、少子化対策や婚姻を促進しようとすると思想信条に入り込みなかなか前すすまないから家族が基本であるというように憲法の条文を変えたい、ってのがあって、どう生活するか、家族を基本とするかどうかというのはそれこそ国が介入する・干渉する必要のない、要らんお世話なことだと思うのです。
「健康のために禁煙を推奨する」という理由でタバコに税をかけたり、中学校の生徒指導よろしく人の私生活に関して関与する方向へこの国はまっしぐらの気がしてて、どこか変な方向へぐぐっと急回転してる印象があったりします。
新聞の政治面をそれほど丹念に読みこんでるわけではないのですが、具体的に憲法改正についてどうも俎上にあがってきそうな気配です。
96条の件に関してきょう、主要政党のいくつかの意見表明がありましたが、96条に関していえば「総議員の過半数憲法改正案が発議できるようにする」というは国会議員の間で3分の2の賛成・同意すら得られないようなものの発議を可能にすることになり、もちろん国民投票を経ることにはなりますが、過半数でないほうを説得できないもの・不利益をこうむりやすいほうに耐え忍ぶものを押し付ける可能性があるわけでどんなもんかなー、などととおもっちまうのですが