喜劇と悲劇

勘三郎丈と玉三郎丈とで三島由紀夫作の「鰯売恋引網」というのを歌舞伎座で以前かけてました。おそらく勘三郎丈なきあと「鰯売」はしばらく途絶えるかもしれません。で、大名とうそをつく鰯売りと御姫様の恋のお話です。それを壁に寄りかかりながら観てて、喜劇仕立てになってて引き込まれたのですが、でも骨の部分は身分違いの恋・ほんとはしてはいけない類の恋の話で、沸く場内を見下ろしながらほんとは喜劇なんだろうか、なんてことをちらっと考えたことがあります。ゲスな見方をすれば仮面の告白を考慮するとほんとはいけない恋を体験してたであろう三島さんが抱えるうっすら悲劇的な部分がちらっと見えてくる気がしたからです。しかし物語はおそらく第三者からすれば喜劇にみえちまってるはずで、おそらくひとつのものでも見方によっては悲劇は喜劇に転化しやすいのかもなんすが。もちろん作者がなにを考えていたかなんてのはわかりません。うっすら違和感があったのは確かで、でももういちどみたいなと思っても叶わないのは悲劇かもです。