選挙中になると政治的なことを書くとあまり好ましいこととは思わないので今のうちに書いておきます。


どこの党とは書きませんが消費税を地方税化して地方交付税をやめる、というのを掲げてるところがあります。地方交付税とはなにかというと所得税と酒税と法人税の3割強、消費税の3割弱、たばこ税の25%が財源で、国から地方へ渡すお金です。
自治体が標準的に必要とする財政需要とその自治体の標準的な税収入の差額を完全に埋めることを目的としています。税収が少なくとも、その自治体に一定水準の行政サービスが行えるようにしています。その結果、都会でも農村地域でも、住民向けの行政サービスに大きな格差が生じることはありません。日本の場合どこの市町村でも基本的に似たようなサービスを受けることができます。たとえば消防や救急は(複数の市町村が共同で組合を構成して運営することがあるものの)離島以外はほぼ整備されつつあります。
この地方交付税を交付されない自治体もあります。たとえば自動車工場のある豊田市や電気機器工場のある府中市などがそれに当たりますが全国に55と少数です。


現行消費税が5%のうち地方は1%ほどとりますが(統計局の統計の「都道府県ごとの消費に相当する額」に応じてあん分して都道府県間において清算を行った上で清算後の金額の2分の1ずつ都道府県と市町村が分け合う)仮に地方交付税をやめて消費税を地方税化した場合、地方交付金なしでもなんとかなるところは消費税を地方税化したらもうほんとウハウハが止まらないです。交付金があっても消費税がある程度見込めるところはそれはそれでなんとかなります。たとえば23年度予算ベースで大阪市は地方交付金は580億ほどで、地方消費税が369億強ほどあります。消費税の取り分が倍になれば大阪市地方交付税はいりません。ですから消費税をそのままくれよ、というのはよくわかるのです。でもそれをやってしまうと、その地方に交付される地方交付税額よりその地方自治体に入る消費税額が少なかった場合、予算不足に悩まされることになります。奈良の明日香村はどうかっていうと、23年度予算を参考に考えるといま1%の地方消費税で4600万、地方交付税が17億2000万入ってるんすけど、消費税がいまの10倍になって入ってきたとしても(まあそんなことないかもだけど)4億6千万にしかならず、地方交付税を0とするとけっこうきついのです。さらに特別地方交付税というのがあります。東日本大震災のときにも交付されましたが自然災害などが発生した際に別枠で交付されるもので、去年の地震のときにも交付されてます。地方交付税の仕組みというのはけっこう重要です。


財政基盤の強い工業都市は別として財政の基盤の弱い農林水産中心の地域ほど地方交付税を無くすとシャレにならなくなります。イシンだかニシンだか名前はともかくとして、実態と関係ないところで机上の構想だけが暴走してるところにうっすらとした恐怖を覚えます。政治がどう変わろうと、それが国民の総意であるなら仕方ないのですけども。