オリエント急行殺人事件

恥ずかしながら10代の頃、頼まれて脚本を書いたことがあります。で、そのときにオリエント急行殺人事件を読んだ記憶があります。重要な着想だけもらってぜんぜん違うものを書きあげたのですが、ですからオリエント急行殺人事件ははるか昔に読んでいて、朝方パンをかじりながら新聞を読んでいてNHKで昼間放送するのを知ってちょっと録画しようかどうしようか、と思っちまいました。(未視聴の番組がけっこうある)けど、ええい録画してからいつか消せばいいと考えて録画しました。
で、さっそく見ちまったのですがネタバレなことは原作を読んでいただければわかるので書けないのですけど、法の正義が機能しなかったときどうしようもない思いを抱えた人間はどうやったらいいのか・法を信じられない事情のある人間に対してそれでも正しさを問うことの難しさ、正しさということの大変さを描いてて、登場人物が「正しいことをなせ」という聖書の言葉を引用しててそれがかなり重要になるのですが、改めて考えさせられる内容で、ちょっとぐうの音もでないというか、唸ってしまった次第。
最近のポアロのシリーズはボストンの会社が一枚かんでいて以前の作風ではなくなってる気がしてて、作り手の意図としてどこか正しさということを強調することがないわけではない最近のアメリカ社会への警鐘になってるのかな、というゲスな勘繰りをしちまうのですが、それはともかくユーモアに満ちた以前のエルキュール・ポワロはそこにはほとんど登場せず、真実を求め犯罪を糾弾する憤怒と正しさとはなにかという苦悶の表情を浮かべるのがちょっと印象的でした。