東京都には23区ほど特別区があります。この23区はほかの市町村より税の側面において微妙に異なる存在です。東京都と23区の間に財政調整制度というのがあり、本来市町村が課税する固定資産税+都市計画税、法人住民税、特別土地保有税を調整の財源としてて都が課税して、都は45%もってゆきます。都から区に55%を配分し区側の実情に応じて23区に配分されます。都が4割以上持ってく代わりに都は原発事故でも対応した消防や水道などを維持してます。都が本来市町村と同様に区が行うべき業務を受け持ち、さらに都と区のこれらの分配の仕組みの必要性というのはわからないでもなくて、税収からすると固定資産税が都内でも高い商業地を抱える港区や中央区や新宿区と、住宅地が多い練馬区や北区や杉並区では差がありますし、都がイニシアチブをとって東京23区をひとつとして考えて調整し財布を共同化して必要的な経費の支出や整備を行う、というのはわからないでもなく、およそ東京の発展を支えた制度であると思います。いくらか乱暴な言い方をするとあるべき地方公共団体としての機能の一部を制限して我慢させてたからこそ、いまの東京があったのかもしれません。
残りの55%とその他の税等で区側は戸籍や住民票の管理や義務教育や清掃業務等を維持し、さらに住民からの要望を踏まえ、23区全区で中学生までの医療費無料化・所得制限なし、ということも維持しています。さらに一部の区では独自の政策として胎児にも手当を出してるところがあります。限られた予算の中で各区ともやりくりしてて、そのかわりどの区も経費を削ってて、区立公会堂の命名権を売却したり図書館業務を民間会社に委託してます。しかし経費削減も限度があります。都と区の財政調整制度比率を区側は長い間変えたいと考えていますがこれもなかなか進みません。協議会があって、区側が都に意見を述べることができますが事態はあんまり変わりません。石原慎太郎という良い意味でも悪い意味でも老獪な政治家の登場により危機は脱していますが、都も財政はやはり余裕があるわけではないからです。
都制度がいいものか、といわれると、メリットもデメリットもあるので評価はわかれます。ただ都が区の財政に関してキンタマをがっしりつかんでる現状は今すぐにはできなくても時間をかけてでも解消したほうが良いのではないか、と思っています。せめて普通の市町村並みにするのがあるべき姿なんあじゃないのかな、と。


自治体を運営する場合、ある程度の経費が必要です。原資となる地方公共団体の税収入は地域差がないわけでもなくて そのため国が地方交付税を交付して補正します。東京都と23区の場合は不交付です。大阪府大阪市は交付団体です。つまるところ余裕がありません。大阪において、現行の行政システムを見直したほうが良いというのはあります。
大阪維新の会大阪都構想というのがあって、大阪都庁を設置して大阪市内各区を再編した特別区を作り、そこに一定の権限を与える構想があります。手続法が今回成立したので、巧くいくかは別としてやってできないわけではありません(頭が痛いのはよりによっていまの大阪市は区長を公募していくつかの区では市長が任命した行政経験・現場経験のあまりない区長が就任し、その区長の下で今後精査しなければならない問題を解決せねばならぬ事態に陥ってますが)。うまくいくかどうかは別として、と書いたのは、大阪都構想では都市計画税事業所税を都に移管し、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税等を都に4割程度もってゆくプランを持ってます。府水道と市水道をすりあわせ、大阪市消防を都で持つ腹積もりのはずですが、都が持って行かない部分とその他の税だけで、特別区はやってけるのかというと未知の部分があるからで、交付団体の数を増やしただけになりかねないからです。さらに誤解を恐れずに言えば住民自治が広がれば行政コストは低くならない可能性があります。コストカッターという損な役まわりは東国原英夫田中康夫というようなしがらみのない部外者や石原慎太郎という人のようなきわめて老獪な政治家ではない限り選挙の洗礼が怖くてなかなか踏み込めないからです。ほんとに効率化を考えるのならばそれがいいかどうかは別問題として住民自治を拡大する前に大阪市全体で高コスト施策をやめたり業務の一部委託や効率化を追求したほうが効果的です。


大阪都構想のベースになってるものは、住民自治を拡充することにあります。いまより自治を拡大する、ということを維新の会は述べています。しかしそれだけなら別に大阪市政令市から一般市に格下げして、いくつかの市町村などの基礎的自治体に分割すれば事足りるのです。もしそれが不可能であったとしても都が税を吸い上げて特別区キンタマを握られちまうような東京都特別区の制度をまねをする必要などないしそんなことして特別区から恨み買うよりも区でもない新たに基礎自治体の在りかたを時間をかけて模索するのも一つの手なのです。なぜ急いで東京のまねをするのか、それこそ東京のまねは大阪の人の一番嫌うことなんじゃないかと思うのですが、ともかく東京からみてると大阪の動きは謎なのです。
私は社民党支持ではありませんが、福島瑞穂議員の「明日の天気は変えられないが明日の政治は変えられる」というのはその通りだと思っています。しかし変えるといってもどういうふうに変えるかが問題で、制度は整ったものの、慎重に考えたほうが良いような気がするんすが。