西友の迷走

西友ウォルマートの傘下に入ったとき、いちばん最初に押し付けられたのがプルーンジュースの2リットルの缶詰(注:ペットボトルではない)と、ばかでかい両手ぐらいの298円のベルギーチョコです。アメリカや英国で売れてるであろうものというのは想像できるんすがうちの近所の西友で買ってる人をみたことがなかったです。誰が飲むんだろ、ジュースを缶詰で、っておもってたんだけど、つまるところ、日本人が買いたい商品じゃなくてあっちが売りたいものを売り場に並べてるのがよくわかりました。印象的だったのは棒棒鶏のタレで(私はよくねぎを刻んでクラッシュしたミックスナッツと棒棒鶏のタレを豆腐にかけてよく食べる)、外資になる前はあったんだけど、取り扱いをやめてて、あーうれないと思ったら徹底的に排除するんだな、と。お客様の声ってのがあるじゃないっすか、あれに投稿しようとしてよくみたら、あぶらあげでも取り扱いを止めたものがあって、取扱い再開するつもりもないです、ってのあとに慇懃無礼にほかの商品を薦めてて、あー、食生活をわかってないのかもな、と。西友ウォルマートにとって売りたいものを売る店であってつかうほうが便利なみせじゃなくなっちゃったなあ、と。あのあたりから西友は迷走をはじめてて、西友はKY(カカクヤスク)っていってEDLP(エブリデーロープライス)ってたとえば銘打ってアオハタのジャムを298円にしてずっと据え置いてたんです。したらいなげやとか近隣の生協がそれより下の価格をたまーに提示するようになった。毎日やすい、ってのはそれなりに魅力なんだけど、それより安かったらそっちへ行くわけで。で、毎日安いというよりも、安さより野菜にしても精肉にしても新鮮さを重視するところがあるじゃないっすか。加工食品や酒類は確かに西友は安いけど、よその店へ浮気して野菜とかはピーコックや生協のほうが良いやーと思って、私個人は西友で食品はあんまりたくさんは買わなくなりました。日用品とか肌着はたまに西友で買うけど西友がなくてもピーコックと生協があればいいやみたいな。たぶんそういうことがあちこちでおきてるんじゃないかと。


御厨貴さんという口述から世代を浮き上がらせる東大の先生がいて、最近読んだのが御厨さんのダイエーの中内オーナーに関する本でした。圧巻だったのは中内オーナーの側近で食品畑が長かった人物のインタビューで、人を育てて新規出店するならうまくいくけど、M&Aと称して大枚はたいて会社を買っても、それを運営する人物がいないとどうしようもない、ということを述べてて妙に腑に落ちたことがあります。リストラとか買った会社側の理屈を押し付けるともうダメなわけで(たぶんいまの西友がそんなような状態だと思う)。ダイエーが資本参加したマルエツにその側近の人は派遣されるんだけど、マルエツに来て初期にやったのがマルエツのパートの人たちがどこで何を買うかということの追跡で、自ら追跡したらマルエツ以外のスーパーで買い物をしてるのをみて呆然とし、頭を下げて彼女らが務めるマルエツの店になにが欠けてるのかを教えを乞うたことからはじめて再建につなげます。日本の小売ビジネスってのはきわめて泥臭いところからはじめないとダメなようで。
東京にサミットストア、大阪に関西スーパーというのがあって、ここのすごいところは鮮魚などについて加工を標準化して熟練した職人を必要とせずに鮮魚売り場を構築できるようにしたところです。それらの仕組みが大量出店を可能にし、人材育成に貢献してることは間違いありません。マルエツももちろん職人に頼らず鮮魚コーナーを運営できてました。しかし人材の問題はそれだけでは解決しません。その地域でなにが売れるかという目利きが必要になってきます。その地域を知ってる人がいないとダメ。そこらへんの事情を知ってるスーパーは戦線を無駄に拡大させません。よその地域に出て行ったらその地域を知り尽くしてるスーパーに太刀打ちがなかなかできないからです。滋賀に平和堂というのがありますが、他社が滋賀にでても滋賀を知り尽くしてる平和堂にどの会社も太刀打ちできません。


鮮魚に限らず海苔でも東京は焼き海苔ですが大阪は味付け海苔でないと売れません。舌がおそろしいほど微妙です。狭い日本で地域によって違う日本の食生活の不思議さを日本に来た青い目の上の人がどれだけ理解できるかわかりません。はたからみてると簡単な話ではありません。
日本のスーパーはその地域を知り尽くしてる目の届く範囲しか出店しません。サミットとマルエツ南関東だけ、関西スーパー京阪神周辺だけ、サンリブマルショクは九州と中国地方だけ、ヨーカドーは主に東日本だけ(西へ行くと弱くなる)、イオンは例外だけど千葉の扇屋とか静岡のヤオハンとか地方のスーパーを吸収してでかくなったところだからその地方の味覚を知り尽くしてるのでやってけるのです。
ケンミンショウってあるじゃないっすか。あれも県をまたいだら全然食生活が違ったりする。日本はそういうちょっと味覚に関してクレイジーなところなんすけど、それに対応しないとやってけないんだけど、それがたぶん外国の人には理解できないと思うので外資系の会社が日本で苦戦するんじゃないかなあ、と。
日本では外資の小売業がなぜ弱いのかという流通関係の大学の先生が書いた商品回転率がどうこうという記事を読んだんですけど、↑にかいたような、もっと別のところに失敗の原因があるような気がしてならんかったり。指標としての回転率は重要なんだけどなんとなく違和感があったのでした。

のちに書いた記事
gustav5.hatenablog.com