東京の都知事はずっと12年、石原さんだったんすが、ここでまた4年の続投が決まりました。

石原さんが最初に都知事になった後に、外形標準課税というのを持ち出して条例を作って利益の出てない銀行に課税しようとしたことがあります。自治体の収入は法人事業税からのものがある程度あるのですが、所得のみを基準としてたので会計上で利益を出している企業からだけ税金を取って赤字の企業からは取らないという税制で、赤字であろうと黒字であろうと都道府県の行政サービスを受けていながらも、その負担していない企業が数多く存在し不公平感がありました。で、地方自治体から各種の行政サービスの提供を受けているんだから、赤字であろうと黒字であろうと必要な経費を分担すべきなんじゃね?ってなところから、所得ではなく法人の事業の規模ないし活動量を基準に課税するという外形標準課税の発想をいれたのがその条例の画期的な点でした。条例そのものは銀行を狙い撃ちにしたので反発がでかかったし、銀行側が反発して訴訟になりました。結果裁判に勝てずに負けちまいます。でも実際紆余曲折あったんすがこれが地方税法をかえまして外形標準課税は事業税の制度として取り入れられることとなりました。自治体の財政状況がすこし安定したのは事実です。財政に付随していうと、公会計制度もメスをいれてて現金主義・単式簿記を特徴とする現在の地方自治体の会計制度は財務状態を把握しにくいっていうのは理解し、石原都政ではもう8年くらい発生主義・複式簿記などの企業会計手法を導入してて、この部門では他の自治体より研修をひきうけたりしてます。
都知事自身が一から考えたわけではないでしょうけど、改革という意味では政府より石原都政のほうがすすんでた時期があったりします。石原慎太郎という老獪な政治家は、東京が日本を変えるっていうほんとにその言葉通りにやったわけっす。
もちろん失敗もあります。
新銀行東京というのをフランスの銀行の日本法人を買って発足させ中小企業向け融資に力を注いだのですがこれが迷走してて、中小企業向け融資をする金融機関がどうしてそんなことをするのかわかんないのですけど都営地下鉄の各駅にATMを作るという妙な投資をして、それが使われないまま撤去されたりしてました。本業の中小企業向け融資もふるわずに都税をかなり入れて再建してるのですがやはり道半ばで、都民からするとああそんな銀行あったよねというレベルです。


自民党員でありながら私は石原さんに入れてません。あんまり政治家として向いてない、と思ってるからです。いちばん向いてないんじゃね、と思ったのは、同性愛者に対する、【足りない】発言です。同性愛者のパレードを見てマイノリティで気の毒だ、といったうえで、「男のペア、女のペアあるけど、どこかやっぱり足りない感じがする」ってなことをいったのですが、足りないというのは石原さんの頭のなかの感覚の話で、現実に生きてる女同士・男同士のペアは、石原さんの考える足りる足りないは関係ありません。現実がどうかは関係なく、頭で考えたことをつい口にしてしまう、小説家としてはともかく政治家としては適格性を欠く人です。もちろんなにをどう感じて言おうと自由です。できればパリのドラノエ市長の前でそれを言えたら大したもんだと思うのですが、その度胸もないでしょうし、頭で考えた思いつきを政策に反映しなければ別に問題はありません。たぶん思いつきかもっすけど、公立学校の芝生の校庭を増やした施策は地味にすごいと思ってるんすがそれはともかく。


築地市場の移転問題ほか(豊洲の予定地、液状化しちまってるんすが)都にはいくつか争点になりそうな問題点が知事選の前にはありました。ところが今回それらはほとんど争点にはなりませんでした。
私は多摩東部の在住で地震のあと、計画停電にふりまわされたりとか、あったわけっす。で、地震のあと地震の被害がない多摩では選挙どころじゃない場面があったのは事実っす。信号が消えるとか、自動車工場のほかにも製パン工場が止まるとか、病院が停電でやってないとか、水道水の安全性についていくらか安心できないところがでてきちまったとか、そういうことが実際にありました。で、漠たる不安を持ってる都民が防災について集中的に発言・行動していた石原さんに投票し、石原さんに票が集まったのは理解できないわけではないです。で、地震っていう漠たる不安にうまくフィットしたのは頭の回転の速い情熱的な東国原さんじゃなくて老獪な石原さんだったんじゃないかな、と。もし東国原さんが経験をふまえて危機対応や防災だけ語ってたら結果は違ったかもしれませんが。


石原さんに不安がないわけではありません。3月の地震の後にコンビニの深夜営業止めろ、っていう発言をしてます。深夜に労働するひとがいるという文学者として必要不可欠な目に見えないところまで働かすべき一定の想像力もなくなってるのかもしれません。だから平気であのあかり消せ、コンビニの夜間営業を止めろっていう。より深刻なのは、節電が必要なのは需要>供給となるといっせい停電を引き起こすピーク時であって深夜じゃないってことがもう、78歳のおじいちゃんには理解できてない。たぶん注進する人もいない裸の王様なのではないっすかね。
そういう人が4年、かじ取りをします。
いまの東京の悲劇は、そこらへんかもしれません。