悲しいこと

いちばん最初は郵便に関することでした。電器屋さんが障害者団体を通じてダイレクトメールを送ってて、障害者団体だと発行物の発送のための郵便物が割引になる、ってのがあってある団体が厚労省に虚偽の証明書発行を掛け合った、という話でした。実際郵便局が提示された証明書を信用して騒ぎが大きくなった記憶があります。当時課長だった人が逮捕されて、罰条は公文書偽造でなく、虚偽公文書作成でした。決裁権限が担当課長にあったからでしょう。でもですね、担当課長に権限があるのならば、虚偽の公文書作成に手を染めるっていうのは考えにくいのです。証明書をだしたいならまず形式的でもいいから障害者団体であるという書類を提出させるはずの話なので、そこをすっとばして虚偽の公文書を作れと指示するってどこかへんなのです。(当時は野党の)政治家に頼まれたから、ってのは便利なことばなのですが、なんだか不思議だなあー、と思ってました。不思議だなー、って思ってるうちに最初から検察が描いた虚偽公文書作成の指示なんてなかった、という判決がでて、あーそういうことなのね、と腑に落ちたんすけども。


で、捜査資料の改ざんのニュースが流れてて、ちょっと待て、と思ったんすけども。
まともなことをかくと刑事裁判の場合、検察官は起訴すべきかどうかの判断権をもっています。で、証拠から判断して立件できそうになければ起訴しない、という選択肢もあります。裁判所で公判がはじまっちまえば合理的な疑いを入れない程度まで犯罪事実の存在を立証すべき立場に検察はおかれてて、公判が維持できそうにない・事実を明らかにできないなら、冤罪につながる可能性もあるのでそうしたほうが良いからです。
でもそれをせずに、さらに事実から出発せずに、最初になにかしらの結論があって、それについて仮説をたてて、その証明の途上で、都合の悪い証拠を改ざんなんてことをしたら、冤罪が起こりえるわけっすけど、今回は冤罪そのものは起きなかったもののおそろしいことに・悲しいことにその手前まできちまいました。


で、私は検察実務を知らないのでへたなことはいえませんが、普通は捜査資料が改ざんされる可能性があるなどとは、普通なら考えません。深刻なのは検察は捜査資料をいじらないという、薄皮一枚でつながってた信用を維持するための前提が崩れちまったことです。下手すると検察は証拠を改ざんするかもしれない、って云う印象を抱いちまうわけで、それを払拭するのは大変かもしれません。
刑の確定までは押収品の占有権限は検察ですが所有権は元の持ち主にあります。そもそも普通の感覚の持ち主なら、押収品とはいえ借り物(の捜査資料)をいじろう、なんて考えないでしょう。あ、普通の感覚じゃない人たちなんだ、っていう事実が、少しのあいだは法曹三者を夢見て勉強し(挫折し)た人間からすると、ちょっと悲しいです。