いままで日本人が国際結婚をする場合は婚姻可能要件をみたしてることの証明である婚姻要件具備証明書というのがたいてい必要でした。「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明する」という婚姻可能なことの証明書なんすけど証明書は自治体で発行し在外領事館等で認証してもらう必要があります(書類が真正であることの証明を付します)。で、わが国は戸籍というのは属人主義というのをとってましてどこで婚姻しようとも国籍を離脱しない限り日本の法律に従って処理する必要があるからです。どの国の人と婚姻しようとも日本の国籍があれば戸籍法上は日本の法制度が関係してきます。で、婚姻の連絡が日本の役場へゆきそれまでの親の戸籍から抜けて新しい戸籍が新たに作成されます。ただ国際結婚の場合は相手が日本国籍でないので「戸籍の記載は日本人のみ」という原則のため(たしか)配偶者は戸籍に記載されません。ただし婚姻の事実は記載されます。
これが女性と男性の間の話であれば証明書発行や認証も簡単なのですがそうでないとき、とくに同性婚希望の場合は発行が難しかったようです。なんのことはない、日本で同性婚って法律に規定がありませんからまかりまちがっても自治体は「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明する」ということはできないからです。しつこいようですが国籍を離脱しない限りむずかしい。しかし、外国で同性婚を有効としている場合に、日本人がその国の法制のもとで婚姻をすることが可能かどうかということは、日本はとやかく云えません。アメリカとかオランダの法制にゆだねられる事柄です。で、去年、神戸新聞で報じられいたんすけど通達で「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明する」ものでない重婚でないこと・独身であることを証明するようなものをつくり、国内法規の枠を離れて同性婚希望者に対応できるようにしたのです。役所らしからぬ対応だなあ、と思ってびっくりした記憶があります。実効性があるかどうかは兎も角として。というのは、外国で婚姻を扱う役所がその文書をどう解釈するかなんすけど。
で、「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明する」ということはできないけど外国法上の同性婚を成立させることが可能になるかもしれない証明書をだして、じゃあ、問題がないのかっていったら、どうなんだろ、と思うのです。先日、カリフォルニア州住民投票で州憲法を改正して同性婚を禁止したのは平等保護を保障した米国憲法に反する、という判決がサンフランシスコで出て、連邦最高裁まで行ってなんらかの結論がそのうちでるかもしれないのですが、もし同性婚が可能ってことになってくるとカリフォルニアで婚姻した一方が日本人である同性の配偶者の入国というのをどう考えるのか、ってなことが問題になってきます。繰り返しになりますが、仮に合憲となったら日本人がサンフランシスコへ行って現地の相手と同性間の婚姻することをするな、っていうことはできない可能性が高いです。で、海の向こうに住んでる限り問題ないですが、日本に住むとき、どうなっちまうのか。たぶん配偶者であっても同性である場合は、配偶者として在留許可がおりるのかなあ。難しいのではないか、と思ってます。その婚姻は日本側からすると「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明」された婚姻じゃないからです。でも入国を拒否して、追い返すことが妥当なのか。
それを考えると、婚姻要件に関する証明書を出さないほうが幸せかもしれないんすが、でも、それはどう考えても妥当ではないわけで。


婚姻とは何か、ってのは当たり前のようでよくよく考えると謎の多い分野なんすけど、同性婚に関していえば海の向こうのことのように思えて、実はそろそろ対処を考えときゃいけない分野になってきてるんじゃないか、なんて思ってます(たぶん入国管理局や法務省あたりでは、このことが検討されてるのではないか、と思うのですが)。ちなみに偉そうなこといってもジェンダーとかセクシュアリティとか、問題意識があって書いてるわけではありません。首都圏のJRではドアの上に映像が流れることがあって通勤途上で「ダーリンは外国人(配偶者が外国の人の話)」が流れてて、一方が同性だったらどうなるんだろ、なんて考えてたに過ぎないんすが。