快感

新入社員として大阪にいた頃に、普段はわりとまともなんすけど一時間もない昼休みのわずかな時間をつかって梅田から阪神電車にのって尼崎センタープールまで行き、競艇を一レースやって帰ってくる、なんてことをする先輩がいました。宣言どうり一時間もしないうちに帰ってきてびっくりした新入りを前に「帰ってこないと思うたやろ?」なんて平気でいいながら次の瞬間、即チャンネルを切り替えて仕事をはじめました。いまから思うとこの先輩のすごいのは、そんなふうにメリハリが利いてたことです。仕事は熱心なんですけど、遊びも熱心なのです。で、ほんと競艇が好きで、お金かけてるからあたりまえなんでしょうけど競艇に関する知識が豊富で、その薀蓄を聞くのは非常に面白かったです。でもほんとに給料の何割かを競艇につぎ込んでて、ギャンブルって麻薬的というか常習性があるんだな、ってその人をみてるとよく判りました。
私はほとんどギャンブルをしない人間なのであてずっぽうですが、ギャンブルのどこが面白いって、たぶん何割かは予想があたった時の快感でしょう。または(賭けは何度かやったことがあるのでそこからの推測ですが)勝つかもしれない、って言う期待感と、勝ったときの快感でしょう。その快感をもう一度ってんで、もう一度ギャンブルに駆り立てるのではないか、常習化してくのではないか、なんて思ってました。


人間って快感に弱いんじゃないかな、とおもうんすよ。
すくなくとも私は気分が良いこととか快感によわいっす。


味をしめる・味を知ってしまった、っていう云い方って巧いなあ、とおもったことが何度もあります。個人的には酒なんかがそうです。未成年の時から酒は呑んでましたけど、夢見心地っていうか、気分良く酔うことがなんべんもあったりしたせいか味をしめちまい、酒をけっこう呑みます。むちゃくちゃ大きな失敗をしてないからいいようなものの、常習化してますから、たぶんこれからも断酒って難しいんじゃないかな、って思います。
処女じゃない頃はわからなかった、男性器の触感・質感(口じゃないけど食感かもしれない)とかそれに付随する快感、童貞じゃない頃はわからなかった性器のフィット感とそれにまつわる快感とか、そこらへんも味をしめちまってます。(セックスの時に「イク」というのかってのは普段とは違うどこか別の場所に連れてかれるような気がするからなのかな、なんて考えたことがあるんすけど)異世界に連れてかれるような身をよじるような快感ってのは絶てる自信もないです。その快感が忘れられなくて誰とでもいいからもういちど欲しいな、と思うときもありましたから、機会があったとき、たとえそんなに好きな相手でなくても寝ちまうことがないとはいえないので、ほんと快感に弱いよな、って自覚はあります。ギャンブル好きの先輩を笑えないわけっす。


ラッシュという催淫剤(いまは規制対象)は吸った事があります。ただし、自分で買ったものではないです。吸えば胸とかあらゆるところが敏感になって身体中がたまらない快感に満ちてきます。理屈じゃなく、たいして前戯が巧くなくても、なんとかなっちまうんです、あれ。それがすごく怖かった。で、使えば異世界へたぶん簡単につれてってくれるってわかってても、どこか怖くなって手をだしませんでした。偶然、ラッシュに恐怖を感じて踏みとどまってたからいいものの、恐怖を乗り越えて自分で買ってたら、ひょっとしたら耽溺してたかも、さらにエスカレートして、快感のために麻薬買ってたかもなーなんて思って麻薬の関連のニュースを見てました。あまり人ごととは思えなかったっす。
巧い具合にカーブを切って右折だか左折だかして、その泥沼にはまらなかっただけ、という気がちょっとしてます。