写楽展に行ってきました。
両国の駅を出るとこの看板が目に付きます。これだけ大きな看板なので、沢山あるんかな、と思ったのですが3枚ほどです。で、今回の目玉はそのうちの一枚の写楽の扇に描かれた肉質画で、看板にもなってる仮名手本忠臣蔵の一場面を切り取った【四代目松本幸四郎加古川本蔵と松本米三郎の小浪】というやつです。小さな絵なのですが、かなり生々しいというか、迫力がありました。

これもこれでいいのですが、残りの二枚の【初代市川男女蔵の奴 一平】というのと【二代目市川門之助の伊達与作】というのがひどく気になりました。両方とも役者絵というよりほんの一瞬を切り取ったような、次の瞬間の表情の絵をみたくなるような余韻を残す絵です。
【奴 一平】のほうはモデルが14歳の少年なのですが、少年特有のはかなげな初々しさってのがすごくよく出てます【伊達与作】は吉右衛門丈にどこか似た、おとなのどこか飄々とした、すっとぼけた優しい大人の風合いの出てる絵です(題名を間違えて覚えてました、すいません訂正します)。もちろん当時の俳優の写真が残ってるわけでは有りませんし、どういう人だったのかわかりはしません。でも、モデルの本質のようなものというかモデルの人柄がでてるというか「あーこういう人だったんだろな」ってのがよく判る絵でした。絵というか、このふたつは版画なんすけども。
正直、一度は絵を描いていた人間として嫉妬したくなるような(比べるのが間違ってるんすけど)、もしくは一度はここらへんの境地に達してみたいな、っていう巧さっす。


北斎の百物語(ひとつずつ物語が終わってろうそくを消してゆくと、最後にほんとに幽霊が出てくるってな怪談)の絵もお岩さんをはじめいくつか出てます。江戸時代、これをみて怪談の話をしてキャーキャーいってたんだと思うと、面白かったっす。
また赤富士で有名な富嶽三十六景の凱風快晴ってのもはじめて実物を見てきました。なんで名作といわれるのか(つか、関東の人間からすると「富士山なんてかわりに招き猫を置いておいてもいいんじゃないか」って思えるくらいの見飽きたありきたりの絵の題材なのですが、冬の朝の晴れた富士の良さってのをこれほど引き出してる絵はそうそうないと思う)よくわかりました。


両国の江戸東京博物館で九月はじめまでやってます。別にたいして浮世絵に知識がなくても行けば江戸には天才的な東洲斎写楽っていう絵師が居たってことだけは判って帰ることになると思います。浮世絵に興味がなければまったくつまらないと思いますが、東京で1300円ほどお金と一時間弱ほど時間に余裕があるときにはぜひ両国へ(ちなみに通常展示のほうはちゃんとみようとすると一時間以上かかります)。