道頓堀の話

道頓堀の映像を見て思い出したことなんすけど。

カーネル・サンダースが沈んでたのが道頓堀です。この道頓堀ってのは運河です。で、周囲を開発し運河を掘った人の名前が安井道頓だったので、道頓堀という名前がつきました。
で、高度成長期と呼ばれる時代に使われない運河を埋めようって話が大阪市であって道頓堀や長堀といった運河が対象になりました。長堀は埋められたのですが、道頓堀の場合、ややこしいことになりました。安井道頓の子孫が道頓堀は先祖が豊臣秀吉からから一帯を拝領して作ったものであり運河として使わないなら安井家に返して欲しい、ってなことを大阪市に主張したのです。理屈だけ考えると土地収用法なんかだと第105条に「事業の廃止、変更その他の事由に因つて使用する必要がなくなつたときは、遅滞なく、その土地を土地所有者又はその承継人に返還しなければならない」ってあるから運河としてつかわないんだろ?だったら安井家に返せ、ってのはまったく理由にならないわけではなかったりします。安井家側は安井道頓江戸幕府から道頓堀一帯を開発・所持支配を命じたときの証文等を証拠として出して争いまして、大阪地裁で11年ほどかけて争われました(大阪地判S51・10・19いわゆる道頓堀事件)。大阪地裁は安井道頓の功績を認めながら現在通用するような所有権と「拝領」や下賜が同じかって言うとそうは言い切れない部分があるなどの理由で棄却し(念のため書いておくと判決書には安井家と道頓堀一帯の係わり合いについても詳細な検討が加えられてます)道頓堀は安井家の手にはもどらず、大阪市側も道頓堀を埋め立てをせずに残してるんすけども。


江戸時代の権利が今でも有効かっていったら確かに疑問符がつきます。
でも、この事件を知ったときほんと漠然と万物は流転するっていうか、確たるものなんてないんだろうし永久とか絶対のものなんかはないんだなあってのと、約束とか権利っていつまで有効なんだろう、なんてことをぼんやりと考えちまったんすが。