小説の効用

時間を忘れるとか我を忘れる、っていうのが適当かどうか判らないけど、小説を読んだり音楽を聴いたり歌舞伎を見たりってことをしてるとそういうことがあります。一度良い体験をするとそれが刷り込まれてしまってもう一度それを体験したくなるってか忘れられないというかなんというか、たまにその中に身を置きたくなります。何気なく「鹿男」をかばんに入れておいて静岡からもどる新幹線のなかで再読してたのだけど筋がわかってる癖して妙に引き込まれてしまい、気がついたら新横浜停車中でした。どこか内心、小説を欲してたのかな、と思う。
小説って現実から離脱する方向性が初めから内蔵されているところがあるとおもいます。小説を読んで現実から離脱してちょっとやすめたっていうか、うっすら渇いたのどを潤したような、そういうちょっとした満足感をもって新幹線を降りれました。
そのちょっとしたお金じゃ換算できないような満足感を得たら、すこしだけしんどい現実も乗り切れそうな気がしたり。