もう恋なんてしないなんて云わない?

うまらない穴ってのが恋愛をするとできることがあるんじゃないかと思います。不安が大きな要素です。
穴というとなんだか性的な意味をもっちまうのですが、そういうつもりはありません。や、自分が持ってる穴が関係ないわけじゃないんすけどね。

好きになった相手から触れられることってのがひどく嬉しいことがあります。狭いベッドで下着しかつけてない状況でしたけど意思を持って伸ばされた手とかの感触や相手の体温を感じたときのリアルさってのは、それまでと同じ外見の手でも全く違う意味合いを私にもたらしました(その後その意味合いとその感触が忘れられずに苦しむことになります)。なんで嬉しかったかといえば、それは意思が合致してたからで、振り向いて欲しいとどこかおもう相手と考えていたことや行動のシフトの方向が合致したことの嬉しさでしょう。次の日の朝に電車の中で、恋愛の醍醐味ってそこらへんの感情のアップダウンにあるんじゃないかとおもうしこれは多くの人が捕らわれて歌とか小説を残すはずだよな、と再確認した記憶があります。


苦しむこともあるんすよね。
ほんとは夜ちょっと相手の家の近くへ行ってどこかで飯を喰うとか、わざと時間を割いてくれるとかどってことない執着が嬉しい。それとどってことない配慮が嬉しい。そういう積み重ねやサミットで一緒に買い物して料理するとか、一緒に肩をくっつけてテレビ見て雑談するとかだけでもよかったのだけど、それだけのことで良かったはずが、それ以外も欲しくなる。それ以上を欲しくなる。プライドがあるからあまり強請れないし、多くを要求できない。けどなるべく電話が欲しい、毎朝メール欲しいとか強請りたい。さらに触れて欲しくて仕方なくなる。理性よりも突き動かされる情動が優先して意味もなく身体が火照って責めさいなまれる経験もあるし、実際寝たら浅ましくなるし、逢えないときは悶々としてゆきました。寝てるときは(抱かれてるときはって言い換えたほうが良いかもですけど)幸福なんすけど、それ以外のときの一瞬がたまにしんどくなる。相手が腰が痛いからっていわれて構って貰えなかったときなんかは頭で理解しててもなんだかがっくりと落ち込んだりしました。その帰りの電車の中で実は自分はこんなにも「構ってちゃん」だったのか、とさらにショックを受けてしまう。
セックスしてなくても恋愛をしてるときはどこか「もっと」って口にしたくなることがあるんじゃないかと思う。プライドでなるべくセーブしてましたけどそれもまたしんどい。
思うに、恋愛で悶々とするその実体は相手に対する執着でどうしようもないこと。で、触れて欲しいとかの欲求ってのはほんとに厄介だとおもいます。たまに不安をもってしまうから何とかして欲しい触れることで安心するから触れて欲しいって言う欲求でしょう。不安をキスや身体で埋めてもらってるときはどこか幸福なんすよ。そのときは埋まるんすけど、暫らくするとたまに不安になる。どこか穴のようなものが出来る。もちろん相手の声を聞いたり体温を感じたり、相手が自分の中に入ってきたりすればまた不安は消えるんすけども。その不安は自分と同じくらいの執着を相手が持っててくれてるかどうかの不安。もちろんしょっちゅう不安になってたわけじゃないんすけど。
充分に構ってもらってるのにもっと欲しくなる自らの浅ましさとの対峙ってのもちょっとしんどい。


「恋は盲目」とか、「二人だけの世界」とはよくいったもので、恋とかセックスが介在すると時として視野が狭くなるはず。不安はそこらへんに関係するんだと思います。そのとき冷静になってたらべつにそんなに「構ってちゃん」じゃなかった確率も高いし妙なところで不安になったりはしなかったはずだし、そもそも埋まらない穴があるかどうかの見極めもできたはず。けど、恋とかいうのは冷静になかなかなれないし、盲目ゆえにあるかどうかは不確定だけどうまらない穴に勝手にはまってどんどん不安になったり、盲目ゆえに自らを見失い相手との適度の距離感がわからなくなったりすることがあると思えます。
すくなくとも私はそうでした。


でも恋はしんどいことがあっても、何気なく手を握ってもらえたりするだけでも幸福感を味わえたりしたので、歌詞のシチュエイションは全く違うけど「もう恋なんてしないなんて云わないよ絶対」っていう結論部分はなんだか同意できたりしますです。