道路特定財源の話1

漠然と考えたことをつらつらと。

道路特定財源:「暫定税率」廃止の場合、歳入減は195億円−−県が試算 /鹿児島

18日開会の通常国会で最大の焦点となる道路特定財源暫定税率延長問題で、鹿児島県は「暫定」廃止の場合の影響額を試算し、県の歳入は約195億円減とした。県道路建設課は「廃止されると、道路の維持補修も含め幅広い影響が懸念される」としている。
試算は、07年度の県当初予算を基に実施。暫定税率の廃止に伴い、軽油引取税など県税の収入が、約90億円の減。現在の税収205億円から約44%減とほぼ半減となる。また、揮発油税など国税の税収減に伴い、補助金など国費の特定財源も現在の半分で、約105億円減と見込んだ。
道路関係予算は555億円で、歳入は、道路特定財源(国約38%、県約37%)に約75%を依存している。残る約25%は一般財源だが、県財政は厳しく、抑制傾向。それだけに県は「貴重な財源」として、対政府予算要望の中で暫定税率の維持を繰り返し求めている。

1月18日付毎日jpより転載

道路整備に使途が限定された道路特定財源というのがあります。ガソリン税なんかが相当します。(一番最初条文をあたらずに書いたので暫定で増額してる部分を道路特定財源と書きましたがガソリン税の本則分増額分すべて道路特定財源です。お詫びして訂正します)現在、本則税率の2倍くらいの暫定税率となっています。なんでこんなことがまかり通るのか、といえば、道路を計画的に整備したときに道路整備の受益者は誰かといったら自動車所有者や自動車利用者で、そこに重く課税しその税収を道路整備の財源として充当するのが適当でしょう、っていう思想です。実際、道路建設や交通事故対策や橋の補修費用とか雪国の除雪費用がそこから出てます。
で、その暫定税率を定めた根拠法は3月末に期限切れになります。暫定税率維持を盛り込んだ税制改正法案を政府側は出そうとしてますが、参議院では民主党が第一党ですから民主党が賛成しない限りうまくはいきません。で、こういう制度をやめようじゃないか、っていう話があります。無駄な公共事業をなくそう、特に無駄な道路を作らなくするために、っていう風潮があって、道路特定財源が槍玉にあげられてきました。民主党の主張は道路特定財源暫定税率廃止です。ガソリン値下げ隊、なんてのが民主党に出来てて本気で暫定税率を止めようとしてるみたいです。暫定税率を下げればガソリンは確かに安くはなります。そうなるとどうなるか、ってのが上の記事です。
鹿児島でこれくらいの影響が出るってことですが、もっと深刻なのは雪国です。除雪が生活する上で必須ですからその費用の手当てに不安があってあたりまえでしょうし、また地方では災害復旧や道路整備そのものがイマイチなところが無いわけではないのですがいまより道路整備のスピードが遅れることは確実で、いまの段階では民主党の主張があまり歓迎されるとは(素人考えからすると)思えませんが。
で、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律っていうのが去年出来てるんですけど

簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律
第20条 
3  特定の税の収入額(これに相当する額を含む。以下この項において同じ。)の全部又は一部を道路に関する費用の財源に充てる制度(以下この項において「特定財源制度」という。)については、国の財政状況の悪化をもたらさないよう十分に配慮しつつ、特定財源制度に係る税の収入額の使途の在り方について、納税者の理解を得られるよう、次の基本方針により、見直しを行うものとする。
一  道路の整備は、これに対する需要を踏まえ、その必要性を見極めつつ、計画的に進めるものとする。この場合において、道路の整備に係る歳出については、一層の重点化及び効率化を図るものとする。
三  特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、平成十九年度以降の歳出及び歳入の在り方に関する検討と併せて、納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成するものとする

政府はこの法律にのっとって現行の暫定税率を維持して慎重に検討して必要な道路は造りますけどたくさんは作りません。でもって道路特定財源一般財源として繰り入れたいです、というスタンスです。いままでは会計というか財布は別で道路は道路の財布だったけどお金が無いから一緒くたにしてしまえ、っていう話です。しかし、自動車の利用者、所有者のみが負担する道路特定財源一般財源化して、というのは全くスジが違うんじゃないか、と思うのです。たとえるなら都営地下鉄の利用者が都営地下鉄の改善のためにある程度の負担を払うのはやむをえないと考えて割高な運賃を受忍しろってなら話はわかりますがそうではなくって都営地下鉄の運賃の一部を都立病院の赤字補填や都債の返還、臨海副都心の整備に使う、っていうのはちとおかしい。
受益と負担の関係を解消してしまって自動車利用者、所有者にだけ一般財源の負担を強いるのは、ほんとはおかしいのです。繰り返しになりますが現行の道路特定財源は受益者が負担する制度です。その原則があるから本則税率2倍っていう重い税負担を誰もが納得してるはずなのです。ですから、一般財源にするならば、その是正をするのがスジなんすけどもなぜかあまり議論されてない。
私は車を持ってないので、正直、深い関心を持ってなかったのですけれど、なんだか悩ましい問題ってことは判ってきました。民主党案は過激で、政府のやり方はスジがおかしい。で、現行の税率、制度を堅持してってのが最適な気もするのですが、そうなると行政改革がすすまないってことなんでしょう。けど、過度の行政改革って誰も望んでないのではないかと思うのですが。