小売り世界最大手の米ウォルマート・ストアーズが子会社の大手スーパー、西友を100%子会社化する方針を固めたことが22日分かった。同日午後にも発表する。経営不振が続く西友の抜本的な立て直しを図る。 ウォルマートは02年に西友と資本・業務提携し、現在は西友株の51%を保有する。近く西友に対して株式の公開買い付け(TOB)を実施し全株式を買い付ける方針で、西友上場廃止となる。
ウォルマート西友に経営陣を派遣し、経営再建を図ってきた。しかし、06年12月期まで5年連続で最終赤字を計上。9月にはグループ全体の正社員の約7%に当たる約450人の早期退職を発表していた。 ウォルマートは今年末、全株式の3分の2超まで出資比率を引き上げる権利を持っているが、一気に完全子会社化することにした。
10月22日付毎日新聞より転載

日本人はわがままです。
商業というのは実はほんとは細かな対応が必要です。それができないと巧く生き残れません。かつてダイエーがガタガタになったのはそこらへんに起因するようです。品物は沢山あるけど欲しいものがない、という評価を下されてしまいました。各地の日本人のわがままに神戸出身のダイエーはついていけなかったのです。
衣料品なんかでも、実は地域によって同じことしてたらだめなのです。例えば東京や神戸の品揃えの感覚で北海道へもってくと痛い目を見ます。北海道の女性は本州に比べて体格のいい(太ってるという意味ではないです)場合が多いので、Lサイズを手厚くしないと「ツカエナイ」という烙印を押されかねない。センスの問題もあります。肌着は白というのを捨てて難波の高島屋は「幸福を招く赤い肌着」というキャンペーンをしたのですがそういうノリは大阪でないとたぶん許容されない。東京や名古屋ならたぶん受け入れられないでしょう。どっかで巧くいったから、ってそれが全国で通用するほど、甘くないのです。


舌に至ってはもっとわがままです。地域差があります。
調味料だと、ソースは東京だとブルドッグですけど、大阪はイカリ、広島はオタフク、愛知はカゴメ、神戸はオリバー、醤油であれば青森ならワダカン、愛知のイチビキ、大分のフンドーキン、兵庫のヒガシマル、香川のマルキンと、支持されてる味にばらつきが有ります。微妙にそれぞれ異なるのです。当然、広島であればソースはオタフクでないと「ツカエネー」となる。
また山一つ越えれば味付けが変わる可能性あります。東京の人間からすると東北なんて全部似たように見えちまうんですがこれが大きな間違いで、東北の大手のスーパーだと惣菜は各県ごとにレシピを変えないとダメらしいのです。極端な話福島の味付けの惣菜を山形市仙台市で出すと評判がよくないらしいのです。そこまでしないと、売れない。えらい繊細です。
こんなふうに、このせまい国土でわがままな(舌の肥えた)国民がわんさかいます。たぶん日本人以外から見るとおっそろしく不合理で不思議で判りにくいと思うのです。外国人から見るとマルキン醤油もヤマサ醤油も同じじゃないか?って思えると思うんですが、日本人にとっては違うのです。たぶん、下手したら日本人以外には差が理解できないんじゃ?と思えます。


西友のこのさきの問題はどこまでこれからの米国人経営者がわがままな日本を理解できるかです。5期連続赤字はそれこそわがままに対応できてなかった証拠だと思います。いままでの西友を見てると「安ければ来てくれるだろう」という単純な考え方をしてる気がしてなりません。ロールバックと称して食品を常に同じディスカウント値段でずらずらと並べてはいたんですが、安いからといって必ずしもそれに飛びつくほど甘くはないでしょう。しつこいようですが、地域によって売れるものは全く違うからです。
また、日本人は米国のように1週間分の食料をまとめ買いしない層が居ます。そもそもまとめ買いをしたものを入れておけるほど大きな冷蔵庫を持たないし、大きな冷蔵庫をおけるほど家も広くないのが仕様です。東京や京阪神なら買い物は車よりも自転車で、下手したらスーパーの食料品売り場やコンビニは自宅の冷蔵庫代わりです。だからいくら安くてもそれほどまとめ買いはしない可能性が高いです。
たぶんそういう特性を知ってか知らずか「でもそんなの関係ねぇ」とばかりにいままでウォルマート西友に米国サイズの商品を押し付けていました。個人的にいちばん「ホームラン級の馬鹿だな」と思ったのは2リットル入りのプルーンジュース缶です。350とか500じゃないんです。2リットルです。ペットボトルじゃないんです。大きい缶詰です。ある日、西友に行ったらちょっとした棚に全部このジュースが並べてあって壮観だったのですが、手を出しずらかったらしく、暫らく放置されてました。ほとんど売れなかったんじゃないかと思います。
次いで「ホームラン級の馬鹿だな」と思ったのが200グラムほどの板チョコが2枚パッケージされていてたウォルマートが主導したらしいベルギー産チョコを大々的に売り出したときです。やはり棚一面にあって、これはちょっと売れた気配がありました。普通の板チョコより大振りでお買い得感はあるんですが、そもそも同じ味のチョコを400グラムも食べ続けたら普通飽きると思うのです。本気で売れると思ってるんだろうか?と不思議に思ったんですが。
こんなことやってたら巧くいくわけないじゃん、と思ってたら5年連続で最終赤字で、ほんとにこういう日が来るから、なんというか複雑です。経営不振の何割かはウォルマートに責任があると思うんですが。


正直申し上げて私は西友ユーザーです。西友を見捨ててないのは実は近所の西友の鮮魚売り場が充実してるからです。いちばん怖れてるのは鮮魚にまでウォルマートががんがん介入してくることです。
願わくば西友○○○○店の鮮魚売り場に変な商品が入ってきませんように。